約束

卯月 幾哉

第1話

「いつか、あなたの描いた絵が見たい」

 その言葉が、私の口を突いて出たのはいつだったろうか。

「そうだな」

 彼は何気なく言った。気休めだろう。私は目が見えないのだから。


 それから数十年が経って、彼は先に逝ってしまった。遂に、この目で彼の顔を見ることは叶わなかった。


「これは何?」

 手渡されたヘルメットのような物の感触を確かめながら、私は係員に訊ねた。

「最新のVR-HMDです。目の見えない方でも映像を楽しめますよ」

 私は、恐る恐るそれを頭に装着した。

「まぶしい」

 思わず、声が漏れた。

「ある有名な画家が、三十年前からこの装置の開発を支援し続けてくれました。彼は、完成したら、ぜひ仮想空間に自分の絵を飾ってほしいと」

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約束 卯月 幾哉 @uduki-ikuya

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