少年と犬の散歩を、兄貴肌の犬の視点で物語は進んでいきます。「いぬ」という言葉を軸にして展開するストーリーは、少年の小さな冒険から、人間や街の成長、そして過去と未来を様々な色彩で紡いでいきます。少年を思う彼の心に、胸があつくなりました。素敵な作品です。
あの日、関東の電車すら止まった日。その時にあの場所にいた人々の、その日からの今まで。そして、失われた数々のものを背負って生きて来た今まで。その日赤ん坊だった子も、ひらがなを読めるくらいにまで成長しました。でも、あの日から帰って来ない人はいて。共に悲しみを分かち合うこと、それを続けていくこと。同じような被害にあう人たちを、出さないこと。風化させてはいけないはずのことを、思い出させてくれました。涙なくしては読めませんでした。心を平らかにして、読む作品だと思います。
最初は、子守をしている犬の優しい眼差しに心が和みましたが、この物語はそれだけではなかった。あの日おこった、すべての出来事を見ることしかできなかった目と、変わってしまった町をながめる眼差し、どれも痛々しく思えましたが、確実に前をむいている。そんな姿にとても心を打たれました。宮城県東松島市のことはあまり知りませんが、本当に海が見え、風を感じる物語でした。ありがとうございます。