最終話 デスノイズは終わらない


(昨日夜十一時頃、大宮市見沼区のアパート202号室でこの部屋に住む男性、藤本康介さんの遺体が見つかりました。発見したのは隣の部屋に住む男性で、202号室からの異臭を不審に思い伺ったところ、中で倒れている藤本康介さんを発見したとのことです。警察の調べによりますと外傷などはなく、突発的な強い精神的衝撃、精神性ショック死の可能性が高いということです――)


 どうでもいいニュースがこのみの耳に入ってくる。ニュースなんてものに全く興味のないこのみはテレビを消したかったが、渋谷しぶたに麗奈れなが見てるようだったのでそのままにしておくことにした。


「精神性ショック死って何? 何か恐ろしいモノでも見て死んだってこと?」


 麗奈が渋谷に聞く。

 ベッドで横になってポテトチップを食べているが、ここはこのみの家だ。麗奈は礼儀とは無縁そうな頭の悪い女子高生JKだが、いい加減、一言言ったほうがいいのかもしれない。


「じゃね。たとえば裸の母ちゃんを見ちまったとか。おえ、想像したら吐きそうになったわ」


「きゃはは、男ならそれあるかもっ! 私の場合、日本史の小池でぶが裸で迫ってきたらショック死するかも。あ、このみはどう? 何見たらショック死しそう?」


 ほんと、くだらない質問ね。


 このみは『モジノラクエン』を開いているスマートフォンから目を離すと、適当に答える。


「うーん、どうだろ。『Leadsリーズ』のボーカル、秀人ひでとが誰かとキスしてるの見たら死ぬかも。一応ファンだから」


「ふーん。……でさぁ、前から隆に聞きたかったんだけど――」


 聞いておきながら、このみの返答に然して興味もなさそうな麗奈は、また渋谷と話し始める。そういった麗奈の態度に慣れているこのみは無言で顔を背けると、またスマートフォンへと目をやった。


 もう十分時間も経ったし、いいか。


 このみは、読んでもいない小説に五つのB!ポイントを投じると、いつものように画面に向かって例の言葉を唱えようとする。一瞬、画面にノイズが走ったが、このみは特に気にせず先を続けた。

 

 私の作品にB!ポイントを返すように。もし返ってこなかったら与えたB!ポイントを剝ぐので絶対に返すように――。

 

 その後、読まずにB!ポイントを投じる行為を五回続けたこのみは、運営からの最新のお知らせに気づき読んでみることにした。そこにはこんな文面があった。



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 2018年11月06日


 特定の作者様に大量のB!ポイントが投じられるという不具合について。


 

 モジノラクエン運営です。


 タイトルにあるように、特定の作者様にB!ポイントが大量に投じられるという不具合が見つかりました。今のところはっきりとした原因は分かっていませんが、誰かによる迷惑行為などではなく、システムになんらかの異常が発生したのが原因であることは間違いないと思われます。


 B!ポイントが投じられた作者様にはすでにメールで報告済みでして、事情をご理解して頂いた上で、不具合によって得たB!ポイントを消去するという措置を取る予定です。二度とこのようなことがないように努めていく所存ですので、今後ともモジノラクエンをよろしくお願い致します。

 

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