作者様の読書歴の数々が歴史書のように展開していく作品。
私の本棚に並んでるものとはずいぶん違うのですが、どれも名前は聞いたことのある、という作品がありました。毎年すごい数の本が出版され、メインストリームに乗るのはごく一部、それでもこうして俯瞰してみるとちゃんと歴史があるように見えるのが興味深いですね。
時代が作家に書かせるのか、作家が時代を作るのか、はたまた読者が時代を決定しているのか?時代というか流行というべきですかね。いづれでもあり、いづれでもないような。
とにかく本が好きという作者の情熱、その中で拾い上げられた作品たち、多分今は本棚に並ぶその作品たち、なんとも暖かな気分になるエッセイでした。
他の方の読書遍歴は、己とかぶっていなくても実に面白いものです。多感な中高生時代を小説とはほぼ無縁に過ごしてきた自分でも、当時手に取った数少ない本はやはり特別で、後々読むことになる所謂〈名作〉の類よりも鮮烈な印象を脳裏に刻み込まれています。面白さという部分はいつ読んでも不変だと思いますが、こと印象に関しては時期や環境といった外的要因に大きく左右されるのではないでしょうか。
SFが読書の原体験とのことで、あまり自分との共通点はないのですが、それでも星新一や山田正紀、筒井康隆辺りは何冊か読みました。時代が近ければ何かしら繋がってくる部分があるんですよね。