第1章:魔法

私は聖華高校の新一年生の垣谷絵美である。

今日は聖華高校の入学式だが、絵美にとってはなんの変哲も無いつまらない日々の1ピースに過ぎない。


さて、まず初めに聖華高校について説明しよう。聖華高校は全寮制の学校で、クラスは成績順のため、ルームメイトは必ず自分のクラスの子と組まされるという決まりがあった。また、聖華高校は女子高のためにとても規則が厳しいらしい。


そろそろ絵美が学校に着く頃、校門の前には沢山の人々が写真撮影や、家族と少しの間離れることを寂しがっている人、もう友達をつくって楽しげに話している人などでガヤガヤと賑わっていた。そんな中一人で来た絵美は人々の注目の的となっていた。

「お母さん、あの子1人なのかな!?」

「もしかして入学式なのに一人で来たの!?」

「あいつずっとボッチっぽくね(笑)」

いろんなヒソヒソ声が絵美の周囲を飛び交った。しかし、絵美の心はすでに死んでいる。だから、彼女はそんな言葉は無視して、さっさと自分の教室へと向かった。彼女のクラスは一年B組だ。

教室に着くと10人くらいがすでに教室に着いていた。前には先生らしい人が立っていた。

「前の座席表どうりに座ってね」

と先生に言われたため、廊下から二列目の一番後ろの席に座った。

隣の子に「私は大町 カレン。よろしくね!!」と話しかけられたが、彼女は何も答えなかった。いや、答える事が出来なかったのだ。心が死んでいるから。

すると、隣から舌打ちが聞こえた。

しばらくして、クラス全員が揃ったので、入学式会場に向かう事になった。

一年B組の入場の時少しざわついた。そりゃあ入学式に一人で来たひとを見れば騒つくだろう。しかし、それは彼女だけのせいではないような気がした。


無事に入学式も終わり、教室に戻って担任が黒板に名前を書いて、自己紹介を始めた。

「初めましてこれから一年B組の担任をさせていただく、小池 久美 といいます。趣味は音楽鑑賞、部活は合唱部の副顧問をしています。どうぞよろしくお願いします。」

教室に拍手が響き渡る。

「では、次は…」と先生が言いかけた時、彼女の隣の子がそれを遮り

「先生、早くルームメイト発表してください!」というと、あちこちから

「確かに 」 「早く!」などの言葉が多々出たため、困った顔をしながらも、先生はルームメイトを発表する事を決めたらしく、出席簿を手に取ると、

「では、ルームメイトを発表します」といい、次々と発表した。

発表が終わった時、またもや隣の子が口を開いた。

「私、垣谷さんと同じ部屋とか嫌なんですけど!」

今度は教室中が凍りついた。先生までもが固まった。

そんな中一人手を挙げた者がいた。先生に指されるより早く、迷いの無い口調でその子はこう言った。

「垣谷さんのルームメイトになりたいので大町さんと部屋を変えてください。」

全員が驚いた。私だって驚いた。しかし、その瞬間私の中のなにかがカチッと音を立てた気がした。

もちろん先生はそれを承諾して丸く収まったが時間が押していたため、一旦部屋へ行き荷物整理の時間となった。

私が部屋へ行こうとすると、

「垣谷さんちょっとまってよ〜」

と言われて振り向くと、さっき私と一緒になりたいと言った子が立っていた。

「私は神楽坂 奈々っていうんだ。これからよろしくね! 早く寮に行こう!」

と言い終わらないうちに神楽坂さんは私の腕を掴んで走り出していた。私は走りながら

「なんで私なんかと一緒になったの?私はこういう事されてとっても迷惑なんだけど…」

すると神楽坂さんはちょっとためらってから

「あなたといると楽しそうだから!それに…私もあなたと同じ東京の孤児院で育ったから。あなたと同じ5歳から。」

私は信じられなかった。私と居ると楽しそうと奈々は私に言ってくれたのだ、私の心は嬉しさで満たされていった。私はいままで出したことの無い叫びをあげながらその場に泣き崩れた。

そう、垣谷 絵美 の心は息を吹き返した。神楽坂 奈々という一人の心優しい友人の魔法によって…

しかし、絵美はいずれ知ることになる。何故こんなにも神楽坂 奈々が垣谷 絵美という一人の出会って間もないクラスメイトについてこんなにも詳しくのか…。

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君がくれた物語 シロクマ 氷 @sirokuma1234

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