夜にひとり
買い物帰りに腹痛が始まった。
辺りはすっかり暗い。
歩く度に腹がジクジクと痛む。
頭から変な汗が流れる。
痛い。息が荒れる。足取りが重い。
辛くても家に帰ろうとする気持ち。
だから歩く。
堤防の階段で仰向けにぐったりする。
汗が出ている頭に冷気を感じる。
ボンヤリしながら見渡す。
何も思わない。民家があって星空があって。だから何だ。
目に入る景色より腹痛がきつい。慰めにならない。
腹が刺しこむ様に痛くて海に降りて用を足す。
パンツが汚れなかった。良かった。
戻って仰向けにぐったりする。
他の人には酔っ払っているように見えるだろう。
まだ歩けない。
このまま死ぬのか。
突然思う。でも怖さはない。気持ちが揺れない。
どうでもいい。面倒臭くてどうでもいい。
ひとりで考えるとこんなもんだ。
痛みがおさまってきた。
しばらくして立ち上がる。
汗はひかない。足取りが重い。
やっと歩く。
家が見えてきた。
もう少しだ。
暗い中で誰かとすれ違って挨拶する。
顔は見えないけど知っている気がする。
頭の熱さと腹痛は続く。
夜に《ひとり》を感じた時。
愚者の妄言 久徒をん @kutowon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。愚者の妄言の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます