第11話 心配性。

男ははきょろきょろとあたりを見回した。

誰もいない。が、もし誰がいても変に思われないように背筋を伸ばし前をむいて歩き始めた。

男は慌てて細道に隠れた。人がいたのだ。男は自分の体を見て、変なところがないか、確認した。そして、息を吸うとゆっくりと歩き出した。人とすれ違うと、男は大きく息を吐いた。もし、肩が当たってあの人が激怒して慰謝料を請求されたらどうなっていたか。あの人がこの後会う予定の友人か恋人に『さっき変な人とすれ違ったー』などと言っていたらどうしよう。笑われていたらどうしよう。変なところは本当になかったか…


男はまた恐る恐る歩き出した。


男はぎょっとした。

交番の前に来たのだ。もし指名手配書の似顔絵に自分の顔が似ていて呼び止められたらどうしよう。歩き方が不審に思われて職務質問されたらどうしよう…。

男は深呼吸して、少し早足に交番の前を通りすぎた。

良かった…何も言われなかった。



男は安堵して、鞄の中を漁った。





鞄には先程盗んだばかりの宝石が、キラキラと輝いていた。

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気の向くままに紡ぐ話 梨の次に愛してる。 @nashinotsuginiaisiteru

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