第3話
2話
「ここかぁ………」
俺が今いるのはヴァイシスの街の中心部に位置するギルドーーーーーーーーーではなく。
中心部から東に数km程離れた場所にある神殿に来ている。
言わずもがな、転職の為だ。
「…ってか豪華すぎじゃ…?」
俺は神殿の中の豪華さに困惑しながらも神殿内を進んでいった。
神殿は華美な装飾で施されており、所々にある謎の像には神秘的なものを感じる。そしてなにより、神殿の奥に位置するとても精巧にできた神官っぽい像は今にも動き出しそうで……って待てよこのパターン…ふっ……読めたぞ…よし…
「ふぉっふぉっふぉ…来客とは久しぶりじゃのぉ…わしがここの神官をやっておる」
像…みたいな人が喋った………が、
「あ、どうも…はじめまして」
俺は平然と接した。
「あ…あれ?全然驚かないのね…うん、まぁ?別に?反応とか…期待してなかったし?」
なんかチラチラとこちらを見てくるが…
計画通りッ!
こういう場面で空気を読まず、あえて平然と接することで逆に相手に精神的ダメージを与えることが出来るのだ!
例えるなら、お化け屋敷で驚かす立場だったとして、相手が驚かなかった感じだと考えてほしい………悲しいよね。
っと、そんな茶番はさておき、俺は未だにブツブツと呪文のように小言を唱えている像っぽい人に一番重要なことを聞いてみた。
「えーっと、転職したいんですけど…」
「……転職?…あぁ…無理じゃよ」
・・・
「無理じゃよ」
・・・
「無理じゃy「いや、もういいよ!えっ!?なに!?なんで転職できないの!?」
俺は、さも当たり前のように転職無理宣言…つまり、俺が冒険者生活ハッピーライフを送れないことを示した目の前の像っぽい人に詰め寄った。
「そうじゃなぁ…つい数年前に転職を行える司祭殿が魔物軍に連れて行かれてしもうての…まぁ…どんまい☆」
このっ役立たずめっ……俺は小汚いウインクまでしてくるこいつを4回くらいぶん殴りたい気持ちを抑えつつ、絶望した。それはもう。例えるなら、好きな食べ物を大事に取っておいたのに、トイレの床に落としてしまったくらいの絶望だ。
「じゃが……そなた、見たところとても貧弱そうに見えるのじゃが、内に何かを秘めておるようにも見える…」
…えっ、なにそれ…あっもしかして俺に秘められた何かが実はとてもすごいやつでこの世界を救えるとかいう設定ストーリー!?
ナンテコッタイ!先に言ってくれよ!
俺はとても感動した。それはもう。例えるなら、トイレの床に好きな食べ物を落としそうになったけど、間一髪で間に合って美味しく食べられたくらいの感動だ。
「えっと!具体的にはどういう!?」
ワクワク…ワクワク…
「気のせいじゃったわ、てへぺろ☆」
…こいつ…うぜぇ…神官じゃなけりゃ顔面に膝蹴りしたい…だがそんなことより一番重要なのは…
「そなた、職業は?」
これだよ……
「魔法使いです」
「え"!?」
…あー…この展開…なんか前にも見たんだけど…もしかして…
「そなた、冒険者には向いとらんぞ」
ですよねー!(泣)
そんなことだろうと思いましたよ!
魔法使いなのに魔法が使えないとか役立たずにも程があるもんね!!
でもね!俺はこの世界で商業も出来なければ工業もできない魔法職。その上、魔法が使えない魔法職をどこのバカが雇ってくれるの?
現実的に言うと、計算が出来ない銀行員とか役に立つの?
もう……どうしよう…泣きたくなってきた…
「あの、どうしても冒険者じゃないとダメなんです…なにか方法はありますか?」
俺はもう涙目で縋すがるように聞いてみた。返事は期待してなかったが、こいつも多分神官の端くれ…何か知って…あっ、ダメだコイツは…絶対役に立たない神官だわ。
と、俺が諦めかけ…否、諦めていると。
「あるお♪」
「……ですよね…………ん?………へっ?」
「いや、じゃから、冒険者になる方法、あるお♪」
ま…まじですか…いや使えない神官とか言ってスミマセンほんと。マジリスペクトっす。
「一体、どうすれば?」
「そうじゃな、単純に言ってしまうと、強くなることじゃな」
「いや、それは当たり前なんじゃ…」
ゲームにおいて、活躍するには強くなるしかない。……いや待てよ?……何も魔法使いが強くなるのは魔法の威力だけじゃない…それこそ筋力や速力も……
「気づいたかの?」
神官が誰にも真似出来ないくらいのドヤ顔をしてくるがそんなこと今はどうでもいい。
つまり、魔物を倒せばいい………
「そうだよ!弱くて魔法使えないんじゃ魔物に勝てないんじゃ!?」
「そんなことわかっておる…だから、パーティーを組んでみてはどうかの?」
「パーティー……?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は、最後までドヤ顔でいた神官に別れを告げ、神殿を後にする。(…あいつは後で絶対ぶん殴る)
目指すのは、中心部に位置するギルド。
ここでは、依頼の受注や発注。その他にもパーティーの募集などが行われている。
しばらく、ギルドへの道を歩いていると、ふと小さな騒ぎが起こっていることに気がついた。
騒ぎの近くに行くと、そこは多くの資材が取引されている市場があった。
武器や防具、素材や薬草、魚や肉など、取引されているものに統一性はなく、売り子が精一杯の声を張って客を呼び込んでいた。
(こういう世界にもやっぱこういう所はあるんだなぁ)
と、俺が関心を持っているとふと声がかけられた。
「兄ちゃん、これ買ってかねぇか?」
そう言って見せられたものは、太陽の光に反射するほどの銀の刀身を持つ両刃剣だった。
かっ…かっけぇ…やっぱ異世界って言ったらこれだよな…!と、思春期の男子なら誰もが思う感想を抱きながら両刃剣を手に取る…が。
「っ!?重っ!?」
重い。とてつもなく重い。
レベル1の魔法使いにとっては、3kgの剣ですら重く感じてしまうことを忘れていた。
クソゲー要因の一つめ……
「はっはっは!兄ちゃん、もっと鍛えねぇとダメだな!」
そんなこと…わかってるわ…
「あの…これお返しします…」
俺は必死で両刃剣を支えながら店主に返す。すると
「兄ちゃん、弱々しいんだからこれ、持ってきな!お代はいらねぇからよ!」
そう言って渡してくれたのは、刃渡り数cmほどの短剣だった。刀身は先ほどの両刃剣ほどではないが、綺麗な銀色をしていた。
おぉ、まじか!ありがとうオッサン…
俺は、優しい店主から貰った短剣ダガーと付属のベルトを腰につけてギルドへの道へと戻る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「………やっぱ、でけぇ……」
俺がこうして呟きをもらしてしまっても仕方ないほどにギルドは大きかった。
伊達に街の中心部ってわけじゃないって感じだな……っと、そろそろ行くか…
そして、俺はついにギルドへの扉を開くのだった。
魔法使いが最弱ってマジですか? 朝雨 @ASame1
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。魔法使いが最弱ってマジですか?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます