第2話
1話
「んはっ!?」
俺は目が覚め、飛び起きようとして
ピキーンッ
足がつった。
痛い…なにこれ地味に痛い…って…
「ここは…?」
「お気づきになられましたか?」
てっ………天使!?
足をつって悶え苦しむ俺の目の前にいたのは、この世のものとは思えない(……あっ、これゲームじゃん)女性プレ…あれ?
プレイヤーかな?いやでもアップデートで追加されたNPCという線も…んー…いずれにせよゲームしては、やけにリアルな女性だ。髪は肩までかかるセミロングでとても澄んだ水色の瞳をしていた…ほんとリアルすぎて現実と混ざりそう…肌の質感とか特に…
俺は何気なしに彼女の頬をつまむ。
「!?」
「…えっ、プレイヤー!?あっごめん、やけに綺麗だったからつい…」
NPCは基本的に触れても反応しないって取り扱い説明書に書いてあったから…プレイヤーだったのか…失礼だったかな?
「っっ!?い、いえ大丈夫です…そっそれよりも…あの…傷は大丈夫ですか…?」
ふぅ…セーフ…ていうか傷って…
「あ…」
俺は自身の体を今一度確認してみると、見るも無残な傷跡が………
まぁ、あるわけなく。確かに超絶な痛みはあるが、傷跡がある訳では無い。さすがゲーム…
と、俺がしばらく思考にふけっていると、
「あ…あの…大変恐縮なのですが…なぜあのようなところに?」
あー…うん…そうだよね…それ聞きたいよね…いやまぁ俺も聞きたいんだけどね……
きっとこの人は、あそこは低レベルで挑むような場所じゃないって先輩っぽく教えてくれてるのかなぁ…?
「えっと…まぁ…開始地点があそこだったんですよ…」
「?」
あれ?俺なんかおかしなこと言った?……うん。自覚はあるよ。普通あんなところから始まらないもんね。
「えっ…えっと……開始地点というのが分からないのですが、とにかくあそこは危険なので近寄らない方がいいですよっ!」
・・・
え、何この女神様。
慈愛に満ち溢れててそれでいてこちらを気遣う澄んだ空のような色の目にかかるセミロングの髪の毛が異様に色っぽくてあぁなんていうか(ry
「ありがとうございます、女神様」
「女神さっ…えっ!?」
おどおどしている彼女も可愛い。
…だが、俺は忘れている訳では無い。
これはゲームであって、彼女が本当に女である確証はないのだ。
なにせ、ゲームでは性別詐称が簡単に出来てしまう。つまり!今俺の目の前にいる天使が実はゴリゴリのおじさんでしたー笑笑とかいう展開があるかもしれないのだ。
だが、俺がそのことについて触れないのには訳がある。
……君たちは、ネトゲをやっていて出会ってから数分くらいの人間に「君って本当に女の子?」と聞かれたことはないだろうか?……普通なら聞かれたことはないだろうな。
……俺は昔やっていたオンラインゲームで安易にそう聞いたことで出会い厨扱いをされることとなった。ゲーム怖い。
つまり、ゲーム内の性別詐称については触れてはいけない暗黙の了解があるのだ。ゲーム怖い。
「ところで……ここはどこです?」
と、目が覚めた時から気になっていたことを目の前の彼女に聞いてみる。
和風って感じだし、もしかすると宿屋に泊めてもらったのかもしれないな…と考えていると、予想だにしない返事が返ってきた。
「ここですか?…私の家ですが……」
「………へっ?」
……え、いや、プレイヤー…だよね、今のVRゲームって、家も買えるの?買えるようになったの?
すると、困惑していた俺を見かねたのか、目の前の彼女は説明を補足する。
「正確には、私の父の家です。今、父は出かけておりますが…」
更に困惑した。
待て………そういうプレイなのか?
確かにRPGなのだからそういうプレイングもありなのかもしれない…けど……父?……なんだこの違和感……とりあえず…
「なにか食べるものあります?」
腹が減ったから考えるのをやめた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁー…いやほんとにありがとうございます」
目の前には完食された皿が三枚。
いずれもとても美味な食材であった…
このゲームは前に説明した通り、引きこもり対策に作られた為、食事の大切さを知るということもあり、お腹が減るシステムがある。…言わずもがなクソゲーと呼ばれる要因の一つである。
「お口に合ったのでしたら、良かったです!」
彼女は俺が食い終わった皿をキッチンの方に持っていく。
んー……よくわからんなぁ。
あの後彼女について色々聞いてみたものの……ほんとに女性なのかもしれない。
・・・
…ということはさておき、だ。
まず色々と俺なりにまとめてみたことがある。
一つ、彼女は生まれた時からこの家に住んでいるらしい。
二つ、ここはヴァイシスという街らしい。………聞いたことがない。
三つ、彼女の父はこの街では有名な冒険家だそうな。
そして四つ、彼女に彼氏はいないらしい。……ヨシッ。
とまぁ、これらのことを元に考えると……
……あれ…?これって異世界じゃねぇか…?
でも確か、ログアウトがあるから……って、メニュー自体開けないんだけど?…………これ……運営にも連絡出来ないんだけど?…
・・・
まっいっか!どっちにしろ今のこの生活だと楽ができそうだし…しかもここがゲームじゃないとなると、彼女は本当に女性ということになる!よし!このままここに住も…
『お前かぁぁああああ!!!?』
「はっ!?」
『ふんっ!!!』
「!?!?」
俺が居間でゆったりとくつろいでいたら突然、強面の男が入ってきたかと思うと俺の襟元に掴みかかり、って片手で持ち上げてる!?
「えっ、いや、誰!?」
俺は勿論、異世界という点では知り合いはいない上に現実もぼっちだからこんな男は知らない。関わりたくない。てか苦しっ…
『貴様が娘をたぶらかした男だな!?』
娘…?何言ってんの?この人…第一ここには俺と彼女しか…………あっ。
「お父さん!?何やってるの!?!?」
『おぉ!愛しのマイハニぶべっ!』
「………え…」
…簡単に今の事態を説明しよう。
彼女、来たる。
父という者、抱きつこうとする。
彼女、所持品の皿で殴る。
…異世界怖い…って、お父さんってことはやっぱりこの人の…
「む…すめ?」
彼女と(頬から血を垂れ流している)男は同時に頷いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『これは申し訳ない!がっはっは!』
「本当に申し訳ございません…」
「えっ、いやあの…大丈夫です、ハイ」
……なんだろうこの状況……全くついていけない。ただでさえ異世界転移でちょっと頭がパンクしそうなのに、初対面のジジイに首絞められるとかちょっと運悪すぎじゃ…
まぁでも結果オーライ……って何もオーライしてねぇよ!?どうしよう……
「あ、あのぉ…俺、お金を稼ぎたいんですけど、ギルドってどこにあります?」
とりあえず、この家に住まわせてもらうともっと悪い事がおきそうなので、ギルド(冒険者にとっては最重要施設であり御用達施設でもある。一般的にクエストを受ける場所ではあるが、パーティーの人と飲んでいたり、と割と自由な場所となっている)について聞くこととした。
とりあえず、この世界でとりあえずうまくやっていくには金を稼ぐしかない。いくらこの父娘から家を借りられる許可は得ているとはいえ、俺に良心がないわけじゃない。ある程度お金を稼ぎ、食事代や、治療費だけでも出さなくてはいけないと思ったのだ、が。
『そうかそうか!冒険者志望か!オメェさん、職業はなんだ?』
…ん?どうしてそんなことを聞くのだろうか…
「魔法使い…ですけど…」
「『え"!?』」
俺が職業を明かした途端、父と娘の二人が絶妙にハモった。ていうか魔法使いごときで驚かれても…って異世界だからもしかして最強職だったりして!?
『……悪いことは言わねぇ…冒険者だけはやめときな……』
( ゜д゜)……え?
『オメェさん知らねぇのか?……この世界では魔法なんてねぇよ』
( ゜д゜)……はい?
「あの……この世界では…魔法自体は存在するのですが…人間が魔法を使用する際のマナというものがですね……無いのです…」
( ゜д゜)……つまり?
「俺って……使えない?」
俺の言葉に苦虫を潰したような顔をした父娘はゆっくりと頷いた。
……うん、分かってた。そんな最強になれるとかはマンガや小説の話だよね。
そんなのないよね。
べ、別に期待なんかしてないんだからね。
『でも、転職は出来るみたいだぜ?』
「!?ぜひ、詳しく。」
いきなりの冒険者否定には驚いたが、道が残されていたことに希望を見出した俺はその後、話を聞いた後すぐに疲れていたので目を閉じ、意識をゆっくりと手放した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます