茂み

スティーブンジャック

茂み

 その日僕は友人と川に行きました。夕方までに用事が済んだため、僕は川で泳ぐことにしました。その日はよく晴れた夏の日でほかにも多くの人が川で遊んでいました。三十分ほど泳ぎ、少し疲れたためそろそろ川から出て家に帰ろうかと思った矢先のことです。何かが僕の腹部にぶつかりました。何がぶつかったのか確認しようと水中に潜り確認しようとしたその時、足首を何者かに掴まれました。掴んでいる手の先を見るとそこには息ができないためか苦悶の表情を浮かべた少女がいました。前日にホラー映画を見たせいか、それとも足首を掴むその手の異常な冷たさによるものか、僕は足を掴むその少女がこの世の存在ではないと察知し、掴まれていた手を振り払い川岸へ向かって必死に泳ぎ始めました。しかしまたすぐに足首を掴まれたのです。今度はさっきよりも強い力で掴まれました。僕は必死に足を振り回しその手を振り払おうとしました。しかしなかなか離れません。力の限り足を振り回していると何か硬いものを蹴り上げました。その瞬間、掴まれていた手も離れていき、僕は一目散に川岸へ向かって泳ぎ、自転車を停めていた茂みに向かい、すぐに家に帰りました。

 次の日の朝、ニュースで足首を掴んだその手の持ち主が九歳の少女であることを知りました。僕が泳いでいた場所から二キロほど離れた河口付近で死体が見つかったそうです。死因は溺死で頭部に殴打の痕があるため警察は事件の可能性もあると公表したとのことです。

 そのニュースを見て僕は安心しました。僕が茂みに埋めた友達の死体は見つかっていなかったからです。

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茂み スティーブンジャック @1281

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