概要
蛍が見えると、おばあさんは声を弾ませたものだった
故郷の田舎町と、蛍と、一組の夫婦のお話。
おすすめレビュー
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- ★★ Very Good!!結末の一行の、はかない美しさに打ちのめされた。
本作は、日本人が「原風景」と思っている(思い込んでいる)風景を、よく見られるノスタルジックなお膳立てで物語化したものではある。だからそこに新奇性はなく、展開されるものごとに新しい驚きはない。
しかし、「六月のこと」のタイトルで始まり、「六月のこと」の一言で閉じるこの小説は、まさにこの閉じ方によって文芸作品として美しく仕上げられた。語り手の感情を離れ、一歩引いたところから幕を落とすことで、叙情性に寄りかかった凡百の「なつかしいふるさと」を描く駄文から一線を画し、小説、物語としての舞台に立たせている。
ノスタルジーをくすぐることで、作品は容易に「それらしさ」を持ってしまう。だからこのテーマ…続きを読む