芸能人である琥珀ユウの感謝祭に参加するために、箱根を訪れた花野ふみ達四人。当然そこはミステリーの舞台となって、のちに悲劇が起こることとなるのだが……。
相変わらず丁寧な心理・行動・情景・情報の描写であり、これはおもしろいはずという安心感を与えてくれます。
中盤、不穏を知らせるような火事が発生して、とある人物の行方が不明となり――そして後半、待ってましたの怒涛の推理が始まります。もちろんその推理は合理性に基づいたものであり、決して突飛なものではありません。意外性のある結末もしっかりと用意されており、これぞミステリーという内容であることは間違いないでしょう。
硬すぎず、だからといって軽すぎるわけでもない万人向けのミステリーがここにあります。皆さまも是非、箱根を舞台にした推理小説を読んでみませんか(⌒∇⌒)
ペットの世話を代行(犬の散歩を請け負ったり、旅行中にペットを預かったり)する傍ら、動物たちの不可解な行動から意外な真実を暴き出す「ペット探偵」!
芸能人のジャグリング・ショーを手伝いに訪れた山中のホテルで、陰惨な事件に遭遇するペット探偵ご一行。
ジャグリングの細かな知識、姓名判断による暗示、果ては色彩学や心的外傷、臓器移植のオカルトまで持ち出して、丹念な下調べに基づいた緻密な謎解きが展開します。
さらには芸能人兄妹の飼っている犬が、謎を解く一つの「鍵」として機能しているのは、ペット探偵ならではですね。
こんなにも多彩な要素が、単なるトリビアで終わらず、事件の真相に余さず当てはまって行く過程は本当にお見事です。
ゲストキャラの夏絵ちゃんが絵に描いたようなちょっと影のある妹キャラで弩ストライクでした。この子下さい。
同じ作者さんのライト文芸系ミステリ『ペット探偵と謎解きカフェ』の外伝的な新作です。
シリーズ物の派生作品なので、一応本編を先にお読み頂いておく方が、登場人物の人間関係などがより深く把握できるのですが、こちらのお話単体でも楽しめる内容になっていると思います。
また、サイドストーリーと言っても、本編シリーズが一話あたり一万字~の連作掌編形式を取っているのに対し、こちらは全八話四万五千字(!)。
ゲストキャラたちの掘り下げ、いつものカフェから箱根へと飛び出した舞台背景、各場面が目に浮かぶような映像的な演出、殺人事件を扱っているのにどこかトボけた会話のユーモアなど、あらゆる部分で増量分に相応しいパワーアップを遂げています。
当然、物腰爽やかなペット探偵・加納伊織をはじめ、カフェの面々の魅力も健在。
綾なす謎の糸を手繰り寄せた先には、まるで二時間物のスペシャル推理ドラマを観終えたような幕切れが待っています。
シリーズファンの皆さんはもちろん、キャラミス好きの方も是非ご一読を!