無料で公開されている文章に、こんなに心を動かされることになるとは思っていなかった。隔たっているのは誰と誰で、それを隔てているのは何なんだろう。
思い返せば中学生だった頃、あんなにも同性同士でくっつき合っていた時代はなかった。男子はこの話にあるように、猫とか子犬みたいにごろごろ転げまわって、女子は女子で、指先を絡め合ったり腕を組んでトイレに立ち会ったり、髪をすきあったり、あんなに他人と距離の近かった時代が他にあっただろうか。
そういう中にも、同性との距離のとり方に悩んでいた誰かはいたのかもしれない。純くんみたいな、あるいはケイトさんみたいな誰かはいたのかもしれない。そういうことに思い至りもしなかった自分の子供時代が嫌になる。
あの頃自分になにができたのか、これから何ができるのか、考えてみたけど、よくわからない。だけど考えるきっかけをこの作品は与えてくれたように思います。
これはいわゆるBL小説ではない。
性欲や「萌え」のような情動は、大なり小なり「ファンタジー」によって成立している。
純くんのマコトさんに対する感情には、「年上好き」などの、ある種の情報によって基礎づけられたファンタジーを必要としているが、異性を愛する純くんには幻想の基礎を必要としない。
それは純粋であるがゆえに、異性愛者の彼女とはとんでもないすれ違いを生じる。
しかし、この物語の恐るべき点は、そのすれ違いをがっちり受け止めたまま、幻想の台座を惜しげもなく破壊して、感情の純化を図るところだ。
いったい何が彼ら彼女らをそこまで激しい闘争のなかへ、希望を伴って臨ませるのか。
陳腐だが、それは「愛」としか呼べないものであろう。
私は他人への関心がどうにも希薄なところがあって、人に寄り添うような気持ちになれることは悲しいかな数少ないんです。それは対人関係だけでなくあらゆる作品に対しても同じで、だから、この作品に出会って涙がこぼれたとき、自分の中で抑えきれないものがありました。
これが創作か。これが表現か。と、思わず息が漏れました。形が無い、目にも見えない、どこにあるのかもわからない「心」「魂」。
確かにこの作品にあります。ありとあらゆるものを凌駕して、その在り方がとても愛おしいです。
人物たちの心に触れ、それが自分の心に沁みていく感覚が愛しくて、震えました。ここに生きている人間がいる。
ずっとこんな作品が読みたかったんです。自分が何を求めていたのか思い知りました。
もっともっと魅力を語りたいけれど、連載中ということなので、ここまでで留めさせていただきます。不躾なレビューになり恐縮ですが、最後まで応援させていただきます。