閑話休題・1幕 各ギガステスの設定資料
本編の更新が滞っておりますので、閑話休題を兼ねて本編ではあまり説明出来ていない、各ギガステスの設定を書きます(苦しい時間稼ぎ)。
本編の方は、クラウ・ソラスとの決着後に対ユミル戦へと移行していきますので、もうしばらくお待ち下さい。
・ギガステス
対ユミル専用の人型機動兵器の通称。装備が質量弾頭のみで構成されている。
これはユミルが宇宙空間に適応した金属生命体であり、恒星などの熱量にもある程度適応出来るほどの耐熱量と、耐放射線能力を備えているためである。
それゆえ、戦略核などのような大量破壊兵器は対ユミルにおいてほとんど役に立たない。機動兵器に搭載出来る程度の熱量兵器は、当然論外である。
動力源と駆動系にユミルの生体パーツを再現することで、ユミル側から見たときに味方と判別しづらい欺瞞機能を持つ。これにより、他の機動兵器より対ユミルにおいて圧倒的に優位となっている。
反面、実のところ他の機動兵器同士との戦いは不得手であり、機動兵器同士での戦いではコストパフォーマンスなどで明白に劣っている。
ただ、そのおかげでギガステスを防衛戦力として配備することに、危機感を覚える為政者が少なかったのは事実であり、保有制限がかなり緩い。
そのため、宇宙に住む住民にとっては貴重な防衛戦力にもなっている。
・ギガス
全ギガステスの始祖でもある、最初期の機体。ギガステスはギガスの複数形であり、今の対ユミル用人型機動兵器の総称の元にもなっている。
名前の由来は、ユミルと同じく伝承の巨人から。
ハインラインの黎明期に、現在は合併している月の中小企業である
最初期の機体ということもあるが、特に機動力がユミルに比べて大きく劣るという点が指摘されており、ユミルとの一対一での戦闘はまず不可能。
とはいえ、ユミルと同じ原理の動力源と生体パーツがかなり再現されていることによって、特に兵士階級のユミルには仲間との判別が難しく、集団で編隊を組んでの射撃戦でなら対応可能な戦闘力は、ぎりぎり備えることに成功している。
そうなるまでにはセレーネから相当数のリテイクが出されており、一部の深刻な問題点については、ギガスの後継機種であるギガスRで解決されることになる。
ちなみに、ギガスも市場に廉価な数合わせ用に販売された時期があるのだが、これはセレーネが乗っていた初期ロットの代物ではなく、ギガスRの開発がある程度進んだ後、ギガスへと技術還元がなされた後期ロットの物。
そのため、販売開始時期はギガスRがロールアウトする少し前からである。
・ギガスR
対ユミルを目的として、主に月経済圏で制式採用された量産型ギガステス。
試作品の域を出ていないギガスを元に全体を再設計し直しているため、統合戦闘力が大きく向上している。特に機動力の向上が著しい。
また、試作段階で動作させるだけで手一杯だったギガスとは違い、ある程度は現地改修などが行えるよう、拡張性の猶予が残されているのも相違点である。
このため、後にギガス
とはいえ、このギガスRでもユミルとの機動力での勝負は苦しく、一対一でのユミルとの戦闘は不得手であり、特に近接格闘戦に移行された場合の対処に課題が残っている。
本体の強度自体はファルシオンと大差がないが、他のギガステスより簡易な構造ゆえに故障しにくく整備しやすいなど、信頼性と整備性では上回っていることもあって、未だに現役で使っている組織もある名機。
・ギガス
ギガスRの制式改修機。主に政治的な事情から、月経済圏などで制式採用されている率が高い。
ギガスRから一部の駆動系を追加装甲と共に換装し、スラスターも交換や追加がなされているが、ギガスRとの共用パーツを出来るだけ多く使用している。
ギガス系列のノウハウの集大成であるが、同時にギガス系列の設計を流用したままではユミルに一対一で対応可能な機動力と、高い統合戦闘力を両立することは非常に困難である、という判断がなされてもいる。
そのためファルシオンとは違い、ギガスRの欠点だった近接格闘戦の対応力と生存力を、多少機動力が落ちても本体強度の向上と、固定武装の増加と強化でカバーする、という方向性で高めている。
これにより、ファルシオンとは違いユミルを腕部や脚部で攻撃しても、駆動系への損傷がほぼ起こらずに済むようになっている(近接格闘戦自体は、非推奨である)。更に、固定武装の性能向上によって統合戦闘力の強化もなされている。
信頼性や整備性も依然としてファルシオンより高く、ワイオミングのように地球圏連合出身者であっても、ファルシオンよりこちらを高く評価している人間も多い。
・アルテミス
ハインラインが主導となってセレーネ専用に開発され、常に改修が行われているワンオフのフラグシップ機(と皆には説明されている)
名前の由来は、月の狩猟の女神から(ちなみにセレーネ自身の名前も、月の女神が由来である)
実際には、セレーネの本体に装甲やセンサー類などを追加装備して偽装をほどこした代物であり、基礎の大部分はユミルの女皇だったセレーネの本体のままである。
セレーネが人間が開発したセンサー類などを使用するため、本体内部に人間用のコクピットを内蔵しており、セレーネは他の人間と全く同様の操作方法で、このアルテミスを操作している(そのため、セレーネ以外の人間でも操作自体は可能であるし、セレーネだからといって特別操作しやすいといったことはない)。
ただセレーネの本体であることに加え、セレーネがユミルとして培った数百年単位の格闘戦の技量を考慮し、かなりピーキーな武装やスラスターなどの設定がなされていることもあって、他の人間に搭乗権はない。
特に、固定武装として採用されている両腕に採用されているマグナネイルは、ユミルだったセレーネには自身の爪と似ているため、むしろ比較的扱い易い装備なのだが、通常の人間にとってはむしろ扱いに困る武装となっている。
装甲は部分的に衝角を兼ねている上、ユミルとの近接格闘を想定して全体的に装甲が厚めにされており、武器を除いた重量はかなりの物である。
クラウ・ソラスとの模擬戦後、両腰部へ『クアドラブルキャノン』というコードネームの、四角く配置された四つの砲身から同時に弾を連射する、リニアマシンキャノンが装備される予定。
・アストライアー
月経済圏で開発された、最新鋭の制式量産機種……となるはずだった機体。
名前の由来は、月の女神。同じく月の女神の名を持つ、アルテミスを基礎に開発されたため。
ギガス系列から基本構造を一新し、ユミルに一対一でも対応可能な機動力の確保と、高い統合戦闘力の両立を目的に開発されている。
高い機動力の確保に成功していながら、ギガスREXすら
……のだが、高性能さと引き換えに値段もそれ相応の高さになってしまったため、量産機種としてはコストパフォーマンスに問題があるとされ、単なる派生機種となるはずだったアストラエアへ、制式採用を譲ることになった。
・アストラエア
アストライアーと同じく、月経済圏で開発された最新機種。
名前の由来は、月の女神アストライアーを元に名付けられた衛星からである。この辺からも、本来は制式採用される予定ではなかったことが伺える。
本来はアストライアーから固定武装を軽量化のため近接戦志向にすることで、近接戦の対応力を高めた派生機種となる予定だった機体。
装甲や武装が近接志向に若干変更されており、機体の軽量化と低コスト化に繋がっている。それでも十分な射撃戦能力もあり、なによりコストパフォーマンスがより優れていたため、急遽量産機種の正式採用がアストライアーから変更されることになった。
固定武装の軽量化のため、アルテミスの近接戦特化の射撃武装であるガンズネイルが制式採用されている、唯一の量産機種。
・ファルシオン
ギガスRを基に、地球圏連合独自の技術を盛り込んで造られたギガステス。
名前の由来は、古来使われていた刀剣類から。
その開発背景には、月経済圏にギガステスの生産技術とシェアを独占されてしまうと、今後の月経済圏の勢力拡大に繋がりかねないと危惧する、地球圏連合の意図が大きい。
大本営のプロパガンダによって、ギガスRよりもあらゆる点で高性能であるとされている。実際には地球圏連合の技術を盛り込んだため無駄に複雑化した構造によって、信頼性や整備性が大きく低下している。
一応、機動力と一部ギガスRでは運用できない装備が使用可能という、若干の優位性があったのは事実ではあり、単純なカタログスペックのみであればギガスRよりも優れた性能を持つ。
しかし、それもギガスREXの登場と同時に霞むことになり、地球圏連合以外の組織で運用されることはほとんど無かった。
政治的な理由で、地球圏連合では一部のエースパイロットには強引にファルシオンが支給されていた。
ワイオミングからは、キッパリとギガスREX以下であると断言されている。
・クラウ・ソラス
ワイオミング専用に改修された、ファルシオンベースの機体。
名前の由来は、伝説の剣から(ワイオミングは明らかに機体が名前負けしていると、当時から思っていた)。
当時、エースパイロットにはファルシオンを支給していた地球圏連合に対し、ワイオミングが再三ギガスREXの支給を催促していた。
しかし、地球圏連合でも有名なエースパイロットが月経済圏の機体を使用するという事態は避けたかったため、その代わりに地球圏連合としては非常に珍しい、個人専用の改修機が許可されることとなった。
当時の地球圏連合は、コロニー内部などでもテロなどが発生した場合には民間人などへの被害を考慮せずに高威力の射撃武装を使用していたこともあり、ワイオミングはそういった事態に対して、近接格闘戦を主体としたギガステスによって被害を軽減することを望んでもいた(ファルシオンより強固なギガスREXの装甲ならば、それが可能だとも考えていた)。
また、当時主流だったファルシオンの機動力は、ギガスRを超えてはいたが対ユミル戦ではまだ不十分であり、ワイオミングは近接格闘戦にも対応可能なギガステスがあれば、味方の損害を軽減可能だとも感じていた。
こうして、改修された機体が近接格闘戦重視型のクラウ・ソラスである。
ちなみに剣と盾が装備された背景には、ファルシオンの基礎フレームが脆弱であったため、武器無しで近接格闘戦は不可能という判断である。
また、銃と剣の複合装備にする案も検討されたものの、地球圏連合の技術力では重量を抑えることが出来なかったため、ワイオミングが却下している。
一方、月経済圏ではこのころ既に、セレーネの要望でリニアサブマシンガンとソードを複合しつつ、重量が抑えられたスティレットが開発されているほど、月経済圏と地球圏連合には技術力の格差があった。
・フラガラッハ
地球圏連合が技術力を結集し、ファルシオンのデータを元にしつつ、メインフレームの基礎設計を抜本的に改善することを目的に開発された、地球圏連合の次期制式量産機種である。
名前は、ファルシオンと同じく伝説の剣から。設計的にはほぼ別物ではあるが、ファルシオンの刀剣類を元にした名付け方は継承している。
基礎設計の改善に注力するため、武器の方はファルシオンの設計を流用しているが、それゆえにファルシオンより信頼性や整備性もむしろ向上している。
流石に月経済圏の新型量産機種と比べると劣っている点も多いが、ファルシオンとは違いギガスREXより明確に高性能である。特に機動力の面では大きく上回っており、対ユミルにおいても一対一が可能な機動力が確保された。
ファルシオンで兵士から指摘されたメインフレームの脆弱性も、フラガラッハでは大きく改善されており、ユミル相手の近接格闘戦において腕部や脚部による格闘も可能なほど(ただし、非推奨ではある)。
今後の課題は、信頼性や整備性を確保した状態での固定武装の性能向上である。
月は無慈悲な鋼の女皇 シムーンだぶるおー @simoun00
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