けがれた社会に人生を翻弄された少年とその無垢な魂に惹かれる少女の物語

深く穢れた大人の黒い欲望が渦巻く社会の中で、物心ついた時にはすでに闇の社会の中にあり、そんな運命のなか生きる道として殺し屋を生業とする少年は、自分が生きていくために自我を殺して、息を潜めて、社会の中の空気のように自分を消して生きていた。目立たないように暮らしていたはずなのに……そんな穢れの中で生きる彼の穢れない無垢な魅力に気が付いた少女は彼に強く惹かれていく。そして、彼の魅力に惹きつけられた少女たちによって彼の運命はやがて大きく動いていく……。

罪深き人たちの報い・制裁、そんな難しい答えのないテーマに、子供たちの身近な社会の小さく純粋な問題と、大人たちの全てを知るには深く大きすぎる巨大な闇のような問題とに向き合いながら、主人公たちは成長していき自分たちのその答えに近づいていきます。
死神、殺し屋、罪、そして幸福。そんな重いテーマを扱うのにふさわしい緊張感のある文章が、非常に力強くストーリーを引っ張っていきます。

物語はそんな難しいテーマに十分に応える力強く緻密な骨格と、読者を失望させない結末で見事にまとめ上げられています。

数ある小説投稿サイトの中でカクヨムならではの作品ではないかと思います。罪とか罰とか死とかそんなテーマに興味のある人はぜひ一度お読みください。

その他のおすすめレビュー

宮 都 さんの他のおすすめレビュー146