第4話龍人の姫 前編
今からずっとずっと昔のこと。このマチには龍人の姫がいた。姫はいつもマチを見守り、唄を歌って過ごしていた。
「ひめさま。みてみて、きょうねかわでこんなきれいないしをみつけたの。ひめさまにあげる!」
「あらあらありがとう。とても綺麗な石ね、大切にするわ。」
「姫様、丁度野菜が採れたんで持ってって頂戴な。採れたてのうちにでも、ね。」
「まあ、とても美味しそうだわ。ありがとうございます。」
「なになに、いつも素敵な唄を歌ってくれているじゃあないか。気にしなくて良いんだよ。」
「それじゃあお礼に唄を歌いましょう。」
姫は毎日ヒトビトと共に幸せに過ごしていた。姫の唄はヒトビトを癒し、希望を与えてこのマチを動かしていた。
ある日、マチに一人の旅人が訪れた。
旅人はマチのヒトビトとは違い、鱗がなく、のっぺりとした顔を持っていた。旅人が自分達とは異なるモノだとマチのヒトビトは気付いたが、彼が悪事を働く訳でもなく穏やかな気質だったのでマチのヒトビトは彼を気に入った。
「兄ちゃん、ちゃんと飯食ってんか?ほら、魚が余ってんだ。やるからちゃんと食えよ。」
「ああ、ありがとうございます。にしても大きな魚ですねぇ。早速宿で美味しく料理して貰いますよ。」
旅人はあっという間にマチに馴染み、いつしかマチに住み着いていた。姫は自分の知らない異郷の地から訪れた旅人に興味を持ち、やがて旅人と慕いあい二人は結ばれることになった。
結ばれる日、男は姫に翡翠色の石を使った腕輪を贈った。
「…これは?とても綺麗だけれども。」
「これは私達が結ばれる記念みたいなモノですよ。あなたの瞳と同じ色の石にしたんです、どうですか?」
「ありがとう…本当にとても嬉しいわ。でも本当に綺麗な石ね。」
「この石は僕の故郷で玉露と呼ばれるんです。あなたが歌う唄の様に澄んでいる。」
「ふふ、本当にありがとう。」
灰色の月は傾き 哀川那月 @Kaigetu
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