第31話 古の魔王

 レンはリア、アイナ、ノア、フェル共に魔王城に馬車で向かっていた。


 とは言え、ただ乗っているだけでは暇だったため俺はいろんなことを聞いてみることにした。


「あの、質問なんですが、あの森はなんで危険になったんですか?」


 俺は自分が召喚された森が危険だということは知らされていたが、どうしてそうなったかはわからなかったため聞いてみた。


「あの『死の森』のことですか?」


 となにやら物騒な言葉が聞こえてきた。でも長く居ることができないらしいから、そう言われるのもわかる気がした。


「多分、その森だと思います」


「そうですね、一言で言ってしまえば、古の魔王の呪いが原因ですね」


 俺の質問に対してフェルさんがそう答えてくれた。


「呪い、ですか」


「はい、そうです。今から1000年も前の魔王が勇者によって討伐された時、魔王が最後の力を振り絞って呪いを発動させたと聞いています」


「なるほど」


「そのため人間達からは魔族全体を敵視する風潮があるのです」


「まあ、確かにそうですよね。殺されるかもしれない呪いをかけられたんじゃ、嫌われますよね」


「その通りです。ですが、今はもう魔族に人間と敵対すると言う者は少なくなっています。しかし人間達は今なお、我々を敵対しているのです。そればかりでなく、いらなくなった者を『死の森』に捨てるなんて言う暴挙に出ているのです」


 フェルさんの言葉を聞いて確かに共感できる部分もあった。古の魔王という悪を今の魔族にも適応するのは思考が固定化されているし、今は違うと言うこともわかる。ただ、それを鵜呑みにできない人間達の気持ちもわかる。


「それはひどいですね」


「それに『死の森』の影響は人間達だけに限った話じゃないんですよ」


「それってどういうことですか?」


「私たちの魔族領は魔王が長く居たということで、呪いがその場だけでなく、魔族領に広がったんです。そのせいで多くの魔族が死んだと聞いてます。それに人間達は呪いで苦しんでいる魔族を受け入れるのを拒んだせいで更に死者も出たそうです。ですので、今は『死の森』に入ってしまっても対応できるようになっているというわけです」


「なるほど」


 魔族も魔王の呪いの影響で、魔族領に住めなくなり、人間達に助けを求めたがそれを拒まれ、更に被害が拡大したと。まあ、魔王側についていた者が魔王により住む場所を追われたからと言って、それを受け入れられないのはしょうがないとも思った。


 ただそのおかげか、魔族領でも住む方法を見つけ、今日まで生きてきたんだから尊敬する。


「それに今では魔族領では呪いの影響も少なくなって、住みやすくなりましたから」


 それは魔族が長い時間をかけて呪いに対応できるようになっただけなのでは?とレンは思わずにはいられなかった。

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文章を現象化するアイテムを手に入れた。 神谷霊 @sinrei

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