人間領のボッチ 4

 ガタン。


 私はそんな揺れる衝撃で目が覚めた。


 目が覚めたばかりで頭が働いていない状態ではここがどこかはわからなかった。


 しかし、動こうとして手足が動かないに私は気づいた。


「——?——?!」


 そのことを不思議に思っているとさらに口には何かついており、話すこともできなくなっていた。そのことで私はパニックになった。


「おっと、目が覚めたようだな」


 そう男の声が聞こえ、そちらの方を見ると見覚えのある男が座っていた。


「——っ!」


 私はなんとか喋ろうとしたが、言葉にならなかった。


「ああ、喋ろうとしても無駄だぞ?どうせもう助けなんてここには来ないんだからな」


 私はどういうことか全く理解することができなかった。


「理解できてないようだから、1つ1つ教えてやるよ。どうせ長くない命なんだしな」


「——!」


 私はその意味がわからなかった。長くない?どういうことだ?


「おぅ、睨むなよ。怖いなぁ。まあ、簡単に言ってしまえば、お前の能力が俺らにとって不都合だったからお前を消すことにしたってことだ」


「——?——っ!!」


 消すという言葉を聞いた時、うまく理解ができなかったりが、それでもすぐにその意味を理解した私はなんとか逃げようとした。


「おい、暴れんなよ。別にお前を殺すわけじゃない」


「——?」


 その意味を聞いて私は安心した。


「まあ、最後には死ぬだろうけどな。俺は手を出さない、ここに置いて行くだけ——」


「——」


 男がそう言った瞬間、浮遊感に襲われた。男の言葉も最後までは聞き取ることができなかった。

 

 一瞬の浮遊感の後、私は全身に痛みを感じた。それが地面に叩きつけられたことだとすぐにかわった。


 目に入ったのは、木と走り去って行く私が乗っていたであろう乗り物であった。最初助かったという気持ちがあった。でも、その考えもすぐに誤りであることを理解した。


 手足が動かない状態で外に放り出されるということは何かの動物、こちらの世界では魔物に襲われても対抗することができないということだ。


 つまり待っているのは死だけということになる。


 そのことを理解すると私は必死に走り去って行く乗り物を追った。


「——っ!!!」


 声が出ない状態で必死に叫んだがその言葉は届くことなく、その乗り物はどんどんと遠ざかって行った。


 ついにはその乗り物も見えなくなってしまった。


 それが見えなくなると急に周りの音がはっきりと聞こえるようになった。風で木々が揺れているだけなのに、その音に体が反応してしまい、どんどんと怖くなった。いつ何かに襲われるかわからず、常に気を張っていた。


 何とかその場から離れようとしたが、手足がうまく動かせず、全然進まなかった。


 そのことでようやく自分の手足に目を向けた。


 私の手足には枷が繋がれており、それでうまく動けないことがわかった。ただ、簡単に外れるようなものでもないため、結局このまま移動することにした。


 周りの音に怯えながら移動していると何かが近づいてくるのがわかった。


「————」


「————」


 何かを話しており、人間かと思った。これで助かった、そう私は思った。


 しかし、その声がした方を向くとそこには人間と似た見た目をしているが人間ではないとわかる生物が2体、空を飛んでいた。


 その生物を見た瞬間私は襲われると感じ、その場から必死で逃げようとした。


 しかし、手足が動かない状態のため簡単に追いつかれてしまい、その2体が私の目の前に立ち塞がった。


 襲われると思った瞬間——。


「————?」


 襲われることはなく、そう何か話しかけてきた。


「へ?」


『——?』


「おい、ちゃんと人間のわかる言葉で話さないと通じないだろ?」

『——、————』


「おう、そうだった!それでお前大丈夫か?」


 たまに理解できない言葉も挟まれるがどうやら敵対しているようではないため、少し安心した。


「やっぱり、お前バカだろ」


「いきなりバカってなんだよ!」


「どう見ても大丈夫そうじゃないだろ。それにその状態だと話すこともできんだろ」


 どうやら1人はバカでもう1人は冷静なようだった。


「おっと、そうだったな。すまん」


 そう言うと、拘束が解かれ手足が自由になり、話すこともできるようになった。


「ありがとうございます」


「おう、気にするな。俺らはお前の味方だからな」

『——————————』


「こんな奴らからいきなり味方だって言われて信じる人間なんていねぇよ」

『———、————』


「そうだけど」


「俺たちは人間の言葉で言うと魔族だ。まあ、お前と敵対することはない。だから——」

『—————』


 本音のところはなんて言っているかわからなかったが、敵対しているわけではないことがわかり、緊張の糸が切れたのか、そこで私は気絶した。

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