第21話 宴席の常

 治三郎は、宴席があれば必ず腰を振りながら歌を歌っていたという。そんな彼のみならず、日本海軍を苦しめたのは、他でもないアメリカ海軍の提督である、太平洋艦隊司令長官であったチェスター・W・ニミッツである。極めて冷静で、実務能力が高く、ハルゼーとは正反対である。忠実かつ不動の姿勢で実務に励むタイプで、理詰めの作業の多い艦隊指揮官に向いていた。それだけではなく、いざとなると強いリーダーシップを発揮している。例えば、マーシャル諸島の攻撃に際しては、日本軍の司令部があるクェゼリンのみを狙うニミッツのプランに、幕僚がこぞって反対すると、「反対する者は、即座に更迭する。五分以内に決めて欲しい。」と沈黙を申し渡していたというし、珊瑚海海戦で空母「ヨークタウン」が大破したのを、ミッドウェー海戦に間に合うように、修理を3日でやれと命じ、真珠湾のドッグに赴き陣頭指揮にあたった話は有名である。頭脳派指揮官にありがちな、存在感を示さない権威のあり方を、彼は否定しているだろう。

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小沢治三郎~最後の連合艦隊司令長官~ @yamady

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