「行く、という意味の雪」。
身柄を売られ、暗澹とした思いで行き着いた先で、留は新しい名前をもらう。
命名した主人・鳴滝は変わり者で、留こと雪は首にされまいと必死に働く中で、少しづつ彼への印象を改め、やがてその人柄を好ましく思うようにすらなっていく。
が、時節はおりしも戦前。
開戦へと向かう時代の波は、雪と鳴滝の下へも訪れて……。
お話の筋は、ある意味シンプル。
そして、だからこそページをめくる価値があります。
幼い頃に図書室で読んだ名作を思い出す、豊かな画風の文章。
一人の娘が過ごす日々と心境にあくまで焦点を当てた細部。
大戦前という時代背景を苦手に感じる方もいるかもしれません。
ですが、最後まで読んだなら、このお話があくまで一人のために綴られた、時勢からは一種離れたものであることを感じられるかと思います。
雪積もる窓際、落ち葉見える庭先、汗かくグラスを持ち込んだ冷房部屋、毎日に少し慣れてきた雨季前の週末、いつ読むにもいいお話のひとつとしてオススメします。
ぜひどうぞ。