エスパー

嫁「夫! 夫!」

夫「なに?」

嫁「私、ESP(イー・エス・ピー)能力に目覚めたみたい! 『エスパー嫁』だよ!」

夫「(とうとう……)」

嫁「なによその『とうとう頭がいかれたか』みたいな顔!」

夫「すごい! 本当にESPだ(笑)」

嫁「ちがうの! そういうのじゃなくて、ESPでものを動かせるようになったの!」

夫「うん? 物を動かすのはサイコキネシスだね。ESPじゃないよ」

嫁「え? ESPって超能力じゃないの?」

夫「ESPってのはエクストラセンサリー・パーセプションの略で、日本語で言えば超感覚的知覚ちょうかんかくてきちかくって感じ。透視とか千里眼みたいに、五感を使わずに何かを知る能力だね」

嫁「そうなんだ。じゃあ私はエスパーじゃなくて、えっと……サイコキネシサー?」

夫「いや、サイコキネシサーなんて呼び方は無いから(笑)そもそもエスパーってのがSF用語でね。小説なんかの創作物以外では、だいたい『サイキック』なんて呼び方をされてる」

嫁「え~? エスパーのほうがかっこよくない?」

夫「かっこいいかどうかはこの際関係ないかな。あ、『この際』で思い出したけど、日本以外ではESPよりも超能力をまとめてPSI(サイ)の方がよく使われてるしね」

嫁「そっちもかっこ悪い」

夫「まぁ言語的な感覚の違いかなぁ。とにかく超心理学、英語で言えばパラサイコロジーだけど、アメリカのジョン・F・ケネディ大学とイギリスのエディンバラ大学には専門の学部があってね、そこではそう呼ばれてるってこと。だから一応サイキックが正式名称だと思うよ」

嫁「ふぅん。じゃあしょうがない。私もサイキックと言うことで『エスパー嫁』改め『サイキック嫁』ね」

夫「そういえば、そもそもどんな超能力を使えるようになったの?」

嫁「あのね、テレビ見ながら『コーヒー飲みたい』って強く願ったら、テーブルにコーヒーが現れたの!」

夫「あぁ、それさっき俺が持ってきたやつ……」

嫁「え? そうなの?」

夫「うん」

嫁「じゃあやっぱりサイコキネシスじゃなくてESPじゃん!」

夫「え?」

嫁「私が頭の中で念じたことが夫に伝わったんでしょ!」

夫「……なるほど、ESPだ」


――了

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

理系夫と文系嫁のSF用語講座 寝る犬 @neru-inu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ