舞台は獣耳を持つ亜人の娘たちを集めた遊郭、『金魚鉢』
主人公フクスは世にも珍しい赤狐の亜人ですが、売られた先の金魚鉢で蒼色キンギョと呼ばれる高級娼婦ミーオと出会います。
フクスは享楽的な世界で必死で生きているうちに、売られた娼婦(キンギョ)達や彼女たちを売った家族の、それぞれが抱えた闇に触れていくことになりますが……。
読み進めているうちに、ギリギリまで追い詰められながら必死に生きているキンギョたちやその家族の姿にほろりとします。
しかし、ある出来事が、張りつめていた糸をふつりと切ってしまいます。
そこから始まる金魚鉢の連鎖的な崩壊――。
金魚鉢に生きる人々がどうなるか、是非読んで確かめてみてください。
獣のような姿で生まれた人間の娘たち、彼女たちは亜人と呼ばれ、蔑まれてきた。
そんな亜人が唯一暮らしが保障される街……それは『金魚鉢』と呼ばれる遊郭街。この街で亜人は自分たちの体を売る代わりにお金と権力を得る。
「一度売られたら最後、もう二度と出ることができない苦界」と言われる金魚鉢で、亜人の少女・フクスは果たして何を見るのか……。
さて、今作には冒頭でフクスを売った実の兄がその金で遊女を買うシーンがあります。
なんとまぁ胸糞悪い話です。
でも、だからこそフクスに感情移入するでしょう。
負けるなフクス、どん底でも頑張って生きるんだフクス……きっと誰もがそう思うはず。
そしてそんなフクスの頑張る姿が見たくて続きをついつい読んでいくと……ああ、この先はネタバレだから言えない。でも、詳しくは言えないけれど「あ、作者さん、うまいことやったな!」と僕は感心しながら一気読みしてしまいました。
世界観も凝っていますし、これは短編では勿体無いです。
長編で読みたいですね。
瑠璃の湖に浮かぶ泡沫の世界――金魚鉢。
そこは「うつしよの理」とは隔絶された、この世の極楽か。
世にも珍しい赤狐の亜人・フクスは、生家を没落から救うために遊郭都市へと売られていく。そこで出会った先輩遊女の青色キンギョ・ミーオと共に、やがて来る破滅的な運命へとその身を投じるのだった。
美麗で艶のある文章が説得力となって、虚構の世界でしかない物語にリアリティを生み出していく。この感覚は読んでみなければ分からないだろう。彼女たちの胸の痛みをとくと味わってほしい。
物語は彼女らが拠り所とする、遊郭都市の崩落から始まる。
そこに至るまでの経緯や、登場人物たちの悲喜こもごもに思いをはせたい。