第10話 真実!? ヤンキー魔法少女! 後編
私はその瞬間までは最強だった。だが彼らは最恐なのだ私にとっては。大きな大きな魔方陣から現れるオラオラ系の住民達。
「なんだぁ?」
「おい…… 見ろよ……」
「あ~ 心折れさせたいね~」
「今時いるのかよ……」
「レディースだっけ? ははっ」
(恐い……)
「麗華ちゃんエロ! 気合いを入れ続けないとっ!?」
「け、けど…… 恐いよぉ……」
「お、お前達!」
「んだよ?」
「あ?」
「変態は黙ってな。おらっ!」
「あべぇ!? (ガクっ)」
「ま、こっちも変態っちゃ変態か…… へへっ」
「撮影の手助けをしてやろうぜ?」
「そうそう」
「思いっきりいくぜ~」
「ちっ 女は一人かよ……」
(あ…… 本当に恐い…… 駄目ぇ……)
「駄目エロっ!? 気合いを入れないとまた全裸になってしまうエロっ!?」
「け、けどぉ……」
「もうエロの魔法力も底を尽きるエロ!」
「あ~?」
「全裸だってよ?」
「やっぱそういう撮影なんだって」
「ついてるわぁ」
「ぶっ飛ばして大人しくさせるかぁ」
その声を聞いた瞬間に私の心が折れる。そうしてエロちゃん全ての魔法力が無くなったのか、私の
「いやぁーーー!?」
「お~」
「すごい演出だなぁ」
「結構……」
「身体はいいなぁ」
「力ずくで…… あ? なんだてめぇ?」
「やめろ」
しゃがみ込み身体を隠して蹲っていた私は、顔を上げて状況を確認する。すると向かいのアパートに住む鈴木さんが彼らの前に立ちはだかる。
「あぁっ!?」
「オデ」
「オ、オッデェ?」
「オデはその身体を存分に使用し、肉壁要員としてヤンキー魔法少女を死守」
「シカトこいてんじゃねぇぞっ!?」
その瞬間、まともに拳をくらう鈴木さん。だがそのままニーターさん達に指示を出す。
「オ、オデ…… に、く、か、べ…… 肉壁ぇ~!?」
「よし。チョリとバグは俺と共にボコられ要員で時間を稼ぐ」
「チョリ-ッス!」
「は、は、は、はい!」
「急げっ!? オデェ!」
「オッデェ! 守る! 絶対!」
「ヤンキー魔法少女が復活するまで耐えるぞっ!?」
「「「 ニー!!! 」」」
(に、ニーターのみなさん…… うぅ……)
「あ? おらっ!」
「俺たちを舐めてんじゃねぇぞっ!」
「うっ!」
「チョ、チョリ-ッス!」
「ひ、一人、よ、よ、より、い、痛くない!」
文字通り身体を張って、オラオラ系住民の猛攻を止める三人のニーターさん。そして全裸の私に走り寄ってくる巨漢のオデさん。オデさんは目を瞑りながらこちらに走り、目の前で立ちはだかる。私に背を向けて。
「オデ…… マーちゃん…… ヒドい事……」
「オデさん……」
「オデ…… 絶対…… 守る…… 女子中二学生オッデェ!?」
「オデさん……」
「おいこらこのデヴっ!? 邪魔なんだよっ!?」
「見えねぇだろうがよっ!? おらぁ!?」
「オデっ!? 痛いオッデェ!?」
加減を知らないのか興奮しているのか、彼らの攻撃は次第に激しさを増し、見ていられるような状況とは言えなかった。
(みんなが…… わたしを…… 助けて…… うぅ……)
「麗華ちゃんエロ! もう一度願うエロ! 気合いを入れるエロ! そして叫ぶエロ!」
「う……ん」
「麗華ちゃんエロ! みんなの思いを受け取るんだエロっ!?」
「うん! ヤンキー魔法少女! 見参!」
初めてこの
「この魔法ステッキを使うエロ!」
エロちゃんが魔方陣から取り出してくれたのは、観光地の土産物屋によく売っている、木刀だった。
「それを使って悪を打ち倒すんだエロっ!」
「うん! じゃあ皆さん……」
「な、長物は」
「ひ、卑怯じゃね?」
「くっ」
「武器ないのかぁ!?」
「相手は一人だっ! 数で押せぇ!?」
「行きます……」
一人ずつ真剣で切り伏せるような形で攻めようかと思っていたが、ほぼ一列に連なっていたので、そのまままとめて木刀を叩き付けた。
「「「「「 (シュワァァァァァ) 」」」」」
なにらや聞き覚えの無い音が後ろから聞こえたが、振り向く事なく佇む私。オデさんも大分やられてはいたが、最初の三人のニーターさんの方が派手にやられていたので、走って駆け寄っていった。
「だ、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ…… 社会派紳士はボコられ慣れてるから…… ハハッ」
「自分も…… よく絡まれるんすよ……」
「み、みんなの思い…… た、戦った、一緒に!」
「エロちゃん! 回復とか出来ないの!?」
「出来るエロ」
「お願いね!」
今度はオデさんの近くへ向かう。オデさんは彼ら三人に比べれば軽傷ではあるが、それでも傷ついた事には変わらない。
「オデさん」
「オデ…… 謝りたい…… マーちゃん……」
「いいんですよ」
「オ、オデェ?」
「もう直りましたからから…… それに私の事を守ってくれたじゃないですか……」
「あ、ありがとうオデェ……」
「ふふっ」
気がつくとエロちゃんに回復された、三人のニーターさんたちも微笑みながら佇んでいる。
「よかったなオデ」
「よかったっすね~」
「よ、よ、よかった!」
「みんなオッデェ!」
「ふふっ ははっ はぁーはっはっはっ!」
「「「「「「 !? 」」」」」」
「まだ生きていたエロか……」
「当たり前だっ!? あのような品の無い連中に不意打ちは喰らったものの、まだまだ戦えるぞっ!?」
「お前のせいで大変な事になるところだったエロ。もし麗華ちゅわんエロが、あいつらに弄ばれたらどうする気だったエロ? 本当に反省しろエロ」
「くっ」
(あれ? あのオラオラ系の人たちは?)
「エロちゃん? あの人達は?」
「麗華ちゃんエロが、叩き付けた木刀は魔法のステッキエロ。あの魔法ステッキに触れた悪人は、人間牧場に飛ばされるエロ」
「人間牧場?」
「そうエロ。人間男が大好きなオスの異種族に悠久の時を刻みつつ愛されるエロ」
「「「「「「 !? 」」」」」」
「お、お前…… 何てモノを持ってるんだ……」
「いいエロ? これ使えるエロ!」
その話を聞いた瞬間は青ざめるも、本日の戦いについて互いを褒め合い始めていた。本当にこういう和やかな感じが、何時までも続けば良いのにと願ってしまったからだろうか。それとも私がいくつかの警告を無視したからだろうか。それは今後の人生をフルに使って考える事になる。
「この二発のエンジン音はエロっ!?」
「この吸い込み音はまさかっ!?」
(なに……? すごい音が……?)
「「 異世界パトロールっ!! 」」
そうしてこの特別秘密空間に現れる船は合計三隻。そして空中ではあるが、近くに停泊すると慌てた様子で制服を着た者達がこちらへ向かってくる。既に四人のニーターさんは制服を着た人たちに確保されていた。
「「 あ、あ、あ 」」
「エロちゃん? サイアークさん?」
「またお前達か……」
「え?」
「ん? 君は? この世界の…… いや…… ここは違うね。え~と地球だっけ? 日本、そう日本だ!」
「は、はぁ」
「こいつらはねぇ…… こうやって異世界をおもちゃにして遊ぶ犯罪者なのさ」
「え?」
「おいカッパのエロ!」
「サー!」
「お前は恩赦を受けてカッパで済んだんだから次は蟲な」
「いやぁーーー!? エローーー!? 蟲になったらもう女子中二学生の下着漁り出来ないエローーー!?」
「え?」
「こいつはもともと人間だったんだけど、あまりにも淫らな事をするものだから、カッパにされちゃったんだよ。それとサイアークさん?」
「はっ! 異世界パトロールごとき、私の親父の力を使って……」
「申し上げにくいのですが、絶縁状が出ておりまして、もう弁護もしないとの事です」
「いやぁーーー!?」
「え?」
「それで君だけど、まさか魔法少女なんて言葉に騙された訳じゃ無いよね? もう中学生で二年生なんでしょ? 流石に分かってたとしか思えないんだ。残念だけど、君にも共犯としての罪状が出ているんだよ」
「え? で、でも…… わ、私、世界を救うって……」
「え~と…… この世界の…… あぁ、これか。中二病だっけ? ごめんねぇ。この世界じゃ病気なんだろうけど、魔法の国だと犯罪なんだよね」
「え?」
「流石に秘密結社と魔法少女が? あなたの世界で戦うってのはないでしょう? ね? 公安警察に相談すれば終わりでしょ?」
「え?」
「ま~ でも、初犯だし証拠があまり出てこなければ……」
「サー!」
するとエロちゃんは私がサインした契約書とタイムカードを、異世界パトロールに提示して渡す。
「……残念だけど」
「え?」
「言い逃れは出来そうにないねぇ…… 実刑かなぁ……」
「え?」
「あ、そうそう。魔法の国は完全男女均等だから。差別無いから安心してね? だから刑務所のトイレも風呂も寝室も一緒なんだよ~ おかげで魔法の国は女性の受刑者が少なくて助かってるよ~ ハハッ」
「え?」
「じゃあ取り合えず行こうか。お~い。久々の女性受刑者だぞ~ 記録だけは取っておけな~」
「いやぁーーー!?」
「蟲は嫌エローーー!?」
「当番弁護士を呼んでくれーーー!?」
そうして私の第二の人生は、この瞬間からスタートする。エロちゃんの魔法力を一切使用する事なく、己の魂と生命を削り、人間から魔法少女に自らジョブチェンジした伝説の女魔法士となる。なお異世界を股に掛けた逃亡人生が始まるのは、また別のお話である。
★ 完 ★ ★ 姦 ★
ヤンキー魔法少女! 雨夕美 @amayumi
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