第9話  真実!? ヤンキー魔法少女! 前編


 私は久しぶりに一人で行動していた。エロちゃんと出会うまでは一人で行動する事が多かった私ではあったが、今ではいつでもエロちゃんと一緒。けど、本日はエロちゃんに用事があったらしく一人でお出掛けしている。


(なんだか久しぶりな気分)


 一人になる解放感と多少なる寂しさを合わせた気分が、私の今の状態。そして、ふと側にいないエロちゃんの事を考えいていると、そのエロちゃんのような気配を路地裏から感じ取る。


(魔法少女ってこういった気配も感知出来るのかな?)


 お腹が減った者が、匂いに釣られるように誘導された繁華街の隙間。そこにいたのは一人の幼い少女と一匹の獣だった。その獣はポン・デ・ライオンのような姿をしている。少女が持った杖とカードが光り、小さい魔方陣が展開されて収束した。


「あの~?」

「「(ビクぅ!?)」」

「あの?」

「「 …… 」」

「魔法の国から来ました?」

「「 !? 」」

「実は私も……」


 そして私は怯える彼女達に事のあらましを伝えた。小学生の彼女はウメちゃん。頷くように聞いていた、ポン・デ・ライオンのような獣の名前はフロちゃん。顔の周りに付いた黒玉のようなモノは、パーマを当て込んだアフロという事が分かった。ちなみにサイドはもみあげ、下側はあごひげをアフロにしていると自慢げに言っていた。


「私たちはこのタロットカードから、解き放たれてしまったモノを回収しているんです」

「へぇ~ すごいね~ 小学生なのにしっかりしてるね」

「ありがとうございます」

「ウメはしっかりしてるフロ!」

「その…… 失礼ですが先輩には意見をしても?」

「もちろん。何でも言ってね」

「それじゃあ…… あの、先輩の状況なんですけど…… ちょっとおかしいと思います」

「そうフロ!」

「え?」

「そんな秘密結社を魔法少女が倒す必要なんてないですよ。公安に通報するべきです」

「そうフロ! なんだか怪しいフロ! 気をつけるフロ!」

「う、うん」

「先輩は優しすぎます。つけ込まれて、しけ込まれたら最悪ですよ?」

「そうフロ! 多分に犯罪者フロ!」


 そうして二人、一人と一匹は念を押すようにして、この路地裏から去っていった。確かに彼女らの言う通りな気もする。二人は魔法の国から持ち出され、この世界で解放されたタロットカードの回収をしている。そして私。秘密結社サイアークの世界征服もとい区内征服を阻止する為に戦っている。


(やっぱり…… 通報した方が…… 公安ってどうやって連絡するんだろう……?)


「う~ん」

「麗華ちゅわん? エロ?」

「わっ!」

「どうしたんだエロ?」

「う、ううん。なんでもないよ?」

「そうエロか? まぁ、なんでもいいエロ。このままパトロールに行くエロ」

「その必要はない」

「サイアークさん!?」

「エロぉ!?」

「特別秘密空間魔法式発動!」


 いきなり現れたサイアークさんが秘密空間へ私たちを飛ばす。この間と同じような採石場な異空間にいる。


「いきなりとは随分な真似エロね?」

「ゲハラドが休みだったのでな」


(ゲハラドさん…… お休みなのに大変だなぁ)


「今日で決着を付けさせてもらうぞ? ヤンキー魔法少女よっ! 召還! いきなりのゲハラド!」

「……久しぶりだね? 魔法少女さん?」

「はい。それとお借りしていたモノです。本当にありがとうございました」


 私は借りていた学生服、いわゆる学ランと白いハチマキを手渡す。


「クリーニングには出していないね?」

「はい。でも、出さなくて良かったんですか?」

「もちろんだ。そして、こちらこそありがとう。ヤンキー魔法少女よ! ではさらばだ!」

「「「 えっ!? 」」」

「ちょ、ま、待てい!? ゲハラド!? 何処へ行く!?」

「帰るのですよ……」

「待っつっんっだ!? これからヤンキー魔法少女との熱いバトルが始まるのだぞっ!?」

「やることが出来ましたので辞めさせて頂きます」

「なんだとぅ!?」

「気づいたのですよ…… 女子中学生に学ランを着せることが夢の私にとって、やる事がね……」

「な、なんだと言うのだ……」

「クリーニング屋ですよ」

「く、クリーニング屋?」

「そうです。中学校の近くでクリーニング屋を経営する事によって、そこに制服が持ち込まれる。後は分かるでしょう?」

「なんという冷静で的確な判断力なんだっ!?」

「まぁ、私の場合は如何せん数が少ない。学ランを着た女子中学生が学ランを持ってくるという確率は少数。だから、体育祭などのシーズンを狙って全国を飛び回り、その機会を得る。住所不定の移動式クリーニング屋と言ったところですかね」

「そうか。そういった、志の高い離職なら応援しよう。アディオス!」

「アディオス!」


 その言葉と共にゲハラドさんは消えていった。そして満足そうな顔をしているのもつかの間で、今度は明らかに困った顔をしているサイアークさん。


「だが正直まいったな」

「まいりましたか」

「そのまま投降してくれエロ」

「そういった訳にもいかん! ゆけ! ニーターくん召還!」

「「「「 ニー!!!! 」」」」

「よし! ゆけ! シンシ! チョリ! バグ! オデ!」

「「「「 ニー!!!! 」」」」

「あっ! エロちゃん!? こっち来ちゃうよぉ!? 変身! 変身!?」

「ちょ、ちょっと待つエロっ!?」

「エロちゃんっ!? 早く出してっ!?」

「は、早く…… 出します…… エロ…… うっ」


 うめき声を出しながら魔法式を呟き、小さな魔方陣から出てくるタイムレコーダーと私のタイムカード。いつもの掛け声の前に、プールで使う身体を隠すタオルを頭から被り、気合いと共に名乗り上げながらタイムカードを差し込む。いつも通りに光が私を包み込みと同時に、特攻服マトイが私を包み込む。


「ヤンキー魔法少女! 見参!」

「「「「 にぃ~ 」」」」

「何をやっている! ヤンキー魔法少女を倒すのだっ!?」

「なんか…… 近寄ったら…… 意識を失いそうなんだよな……」

「そ、そうっすね~ なんか、本能が怯えてるっすよ~」

「ぼ、僕…… す、少し、みんなと、は、話せるように…… ふふっ」

「ォ……」

「どうした? オデ?」

「オデさんっす?」

「ど、ど、ど?」

「ォッ……」

「マーちゃん……」

「「「「 ビクぅ!?)」」」」

「マーちゃんにヒドい事した人が一人います」

「オデっ!? ヤバいぞっ!?」

「オデさんっす!?」

「や、や、や」

「ォッデ……」

「マーちゃんにヒドい事した人を、止めなかった人たちも連帯責任です」

「「「(ビクぅ!?)」」」

「マーちゃんの苦しみ…… 無抵抗なモノに暴力を振るい、強引にねじ込み絞る悪行…… そうですね…… 同じようにしてみましょう…… 人体で…… ね……?」

「「「「「 いやぁーーー!? 」」」」」


 すると、サイアークさんの後に隠れてしまう四人のニーターさん。私は一歩ずつ一歩ずつ確かな足取りで前に進んでいく。


「どこへ行こうというのです?」

「ちょ、お、お前らっ!? 戦えっ!? 戦うんだっ!?」

「無理だって!? 女子中学二年生のする目つきじゃないっ!?」

「あれヤバいっすよ? 地元にいた伝説のパイセンレベルの目つきっすよ?」

「さ、最後、に、にに、みんなと…… い、いしょ、一緒!」

「オッデェ……」

「どこへ行こうというのですか?」

「「「「「 …… 」」」」」

「マジギレ麗華ちゅわんエロ」


(どうしようかな? まずは一人ずつ回収して……)


「ふふっ ははっ はぁーはっはっはっ!」

「……なんでしょうか? サイアークさん?」

「し、仕方あるまいっ! 大召還! 誰でもいいから助けてぇ!?」

「だ、駄目エロっ!? 召還の際に弱気になったらエロぉ!? 良くないモノがこの世界を支配してエロぉ!?」





★ 最終回 真実!? ヤンキー魔法少女! 後編 ★





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