0018

「おばけ……?」

いったい何を言っているのかよく分からず、彼が放った言葉をオウムのように繰り返した。

「厳密には違うけれど、似たようなものね」

「死んでしまっていたんですか……?」

「もしかしたら、死んでいるかもしれないし、生きているかもしれないわ」

またよく分からない。

私の表情を見て訊きたいことを汲み取ったかのように、彼は話を続けた。

「アタシはね、空間を自在に行き来出来るのよ。ここから地球の裏側にも行けるし、更には未来にも過去にも行けるわ。人の頭のなかだって覗けちゃう。信じるかどうかはお嬢さんに任せるけどね」

ああ。だから私の考えていたことが分かったのか。信じられないようなことではあるが、ひとつ、ふたつと謎が解けていく。

「アタシは今過去からここに来てもう何十年もこの屋敷に住んでるわ。だけど、多分長くここに居すぎて実体事態があやふやな存在になってしまったのよ。謂わば、シュレティンガーの猫のようにね」

「何十年も?じゃあシュワルツェネッガーさんとは」

「あの坊やが屋敷に住む前からアタシはここにいるから彼のことをよく知っているわ。彼もまたアタシのことを知っている」

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口づけは優しく 花橋 悠 @h3-K25yk

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