其の2
夜。出勤する。出勤場所は『銀座ルパン』。もういったと思うが、あの有名な無頼派が集まった場所でもある。
私が何故、ここで働くのかというと簡単に言えばただ手伝いが欲しいとか。そんな理由でここで働くことになった。
私としても都合がいい。ずっと執筆続けるよりかはマシだ。
準備が整い、カウンターで客が来るのを待つ。既に客が何人か来ており、酒を飲んでいる。
酒乱が暴れればここの店長が力ずくで追い出す。そんな店だ。…店長強いな
強いというより、恐ろしいという言葉の方が似合うな。
カウンターでコップなど洗い物してるとき、
「お姉さん、話聞いてよ」
そう話しかけてきた。話しかけてきた青年の第一印象は見たことあるの一言だった。
暗い色の髪。キリッとしていた眉毛は下がり、弱々しく見える。手には酒。
「…って言うかお姉さん、新人かぁ~」
酔っているせいか若干呂律が回ってないせいか語尾が伸ばされている。
「お姉さん、私は太宰治~、ほら、人間失格で有名の~」
太宰治。そう言われて気づく。
だから見覚えあるのか。
太宰治。三十八才で死亡。自殺主義で有名な文豪だ。代表作は『人間失格』や『走れメロス』。
無頼派と言われ、生前、私から見ても酷い、滅茶苦茶な人生を送った文豪だ。
そしてモテる。死因が心中らしいから。
「っていうわけでよろしく~お姉さん、名前は~?」
「宇野千代です。」
「宇野!?あの芥川先生の友人様ですか!?」
ガバッ、と一気に酔いが覚めたようにいう。
…そうだ、太宰治という人間は芥川龍之介のファンなのだ。強烈な。ノートには芥川龍之介と繰り返し書いていたり、ポーズを真似したり、また芥川賞欲しさに審査員でもあった川端さんに芥川賞懇願の手紙をだしている。それほど過激なファンなのだ。
「本物だ!!宜しく、千代ちゃん!!」
そういって手を握られ、ブンブン上下に揺らす。
…何故に千代ちゃんだ。
理由はあとから聞くと、見た目が年下っぽいかららしい。
文豪さん!! 紅結 @Aimagu
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