第4話 ランドセル買いました
三日前にやっと六歳になりました!! 学校はもう少し先だけどちょっと早めにランドセルを買ってもらいました! まだぶかぶかの不格好だけどうれしくて、そのままお兄さんに見せに行くことにしました。
お兄さんはタバコを吸いながら海月さんとぷかぷか遊んでいました。そのうちにあたしあに気付いて、タバコを吸うのをやめました。少しは気を使ってくれてるのね! なんだか、照れくさくなりました。
「もうお前も小学生か、早いな。会ったときはこんな赤ん坊だったのにな」
お兄さんは手を膝位のとこにやり、意地悪そうに笑いました。
「お兄さんてばひどいわ!!」
ぷんすかぷんすか火が出そう。お兄さんは悪かったなといってあたまをぐしゃぐしゃにしてから、立ち上がりました。
そうして、お兄さんはこう言いました。
「いいとこ行こうか。」
そのままゆっくり歩きだしました。目指すは、きっと山の方。
もうすぐ夜になるっていうのにどこに連れてかれるのかしら。〝ゆーかいはん〟だったのかしら。そんなはずはないわよね。大丈夫よ。そう思いました。
空がオレンジ色になってきました。すこし耳が痛いです。そうするとそれに気付いたお兄さんは上を脱いであたしに着るように言いました。やっぱり大きかったけど温かかったし、お兄さんのタバコ臭いにおいと何だか優しいにおいがしました。
それから少し歩いたらなんと、きれいな景色が見えました。
「入学祝いだ。」
お兄さんは小さい声で言いました。あたしの中できっと一番きれいな景色でした。太陽が落ちていきます。少しづつ町がキラキラ光ります。あたしのお目目もきらきら光ります。
「太陽さんってば働き者なのね。」
あたしは思いました。疲れないのかしら、世界中にたっくさんのきれいな景色をつくってたら、休憩位ほしいわよね。毎日働いたら、倒れてしまうわ。
素敵なものは時々だから素敵のなのよ。
「お前ってたまに独特なこと言ううよな。」
「そうかしら」
「こどもってすげえな」
「でも、あたしみんなに変って言われるわよ。」
「あー…やっぱ少し変わってんのな。ま、お前のいいとこだけどな」
「褒めたってなにも出ないのです」
「いつからそんな言葉おぼえたんだ。…帰るぞ。家まで送る」
お兄さんはあたしを抱きかかえて山を走っておりました。思わずキャーなんて悲鳴を上げたけれど、とっても楽しかったわ。またこれたらいいな。
「お兄さんありがとう」
「ん。」
後ろを向いて手を振りました。
家に帰ると心配していたママがいました。そしてその隣にはカンカンに怒ったパパもいました。
…今回は、正直お兄さんのせいだと思うわ。
くらげと少女 海月 雨鷺 @usagi818
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