第3話 お友だちじゃない!

「お前な……」

「また来たわ!」

 前遊びに来たとき、たくさん知らない言葉を教えてくれたから楽しかったの。だから遊びに来たわ! だって、楽しいことをもう一度したいっていうのは誰にでもあるわ。

 あたしだけじゃないもん、きっとそうよ!


「前に来るなと言ったはずだが……?」

 あら、そうだったかしら、と首をかしげていると、またくらげのお兄さんは、はぁ…とためいきをつく。

 お兄さんは、少しため息が多いと思うの。幸せが逃げちゃうこと、しらないのかしら?


「まぁいいとして・・・今日は何のようだ」

「遊びに来たのよ! ふふ、ママにはお友だちと遊ぶっていったけど嘘じゃないわよね」

「俺はいつからお前の友だちになったんだ」


 と、立ち上がって近付いてくる。近くで見ると大きいわね。上ばかり見ると首が疲れちゃうわね。お兄さんは下を見てるからいいかもしれないけど!


「ところで、お前は友達ちゃんといるのか? こんな路地裏なんかにいたら先生とかに怒られるんじゃ…」

「心配ごむよー! お友達ははるちゃんとすみちゃんがいるからだいじょーぶよ。それに、先生はお友達と遊ぶことはいいことだって言ってたわ。ママだって気を付けてねって言っただけだもん。」


 胸張ってこたえてやったわ! くらげのお兄さんはまた深いため息をつく。そんなにため息つかないでほしいわ、あたしもくらーい気分になっちゃうもん。

 …来たのはいいけど何をしようかしら。

「お兄さん、なにか楽しい話をして!」


 あたしはこれしかないと思うわ、いろんなこと知るのは楽しくて好きなの。だから、小学校も楽しみなんだ!! ふふ、早く入学できないかしら。


「楽しい話と言われても…。あ、お前、漢字知ってるか? いや、習うのは小学か。まあいい、そのうち習うぞ、難しいから覚悟しておけ。俺なんかおぼえられなくて、先生に怒られたもんだ。

 …ゴホン、そんな話はどうでもいいんわけだが、お前くらげって漢字で書くと、海の月って書くんだ。綺麗だろ」


 と、お兄さんは満面の笑みをこぼした。海月の話をしてるお兄さんは生き生きしていてとっても好き。笑顔の方がいいに決まってるもの。


 …それにしても、くらげは海のお月様なのね…!素敵だわ。

 お友達に自慢したいくらいだわ。あたしのお友達はお月様なのよって。そうしたらみんな驚くわ。ふふ、いいことしったわ。流石は海月のお兄さんね!


「とっても素敵! じゃあ周りのお星さまは…?」

「ヒトデだ。」

「わあ…! 海とお空はつながってるみたいね! 海もお空も仲良しこよしね…。あたし、いつか海に遊びに行きたいな…」

「今度連れて行ってもらいな」


 そういうと、お兄さんはふわっと頭をなでて、帰れと言ってそっぽをむいたわ。仕方がないから、かえることにした。


 あたしは、お家に帰って今日のことを話したら、ママは

「たくさん知れてよかったね」

 と、たくさん褒めてくれたの。また褒めてほしいな。


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