第2話 挨拶は基本よね
「初めまして…!」
お兄さんは、不思議そうにこっちを見ている。顔になにかついてるのかしら。顔をゴシゴシしてみたけど、なにもなかったわ。
それに、見つめるだけで、言葉一つ発しないなんて・・・! 大人としてどうなの? あたしが教えてあげる
「くらげのお兄さん! 返事くらいしてよ! 挨拶は基本的じゃない! 保育園の先生ちゃんと教えたのかしら? 」
あたしがそう言うと、お兄さんは驚いたような顔をして、やっと喋った。
「お、お前これ見えるのか・・・? まさか、な?」
「うん、見えるの。ママも病気っていうの。可笑しいでしょ?」
「あのな、いいか? っておい聞け、海月と遊ぶな! 」
どうしてお友だちと遊んではいけないのかしら? と、聞きたいところだけどお話はちゃんと聞かないとダメよね。うんうん。
「何かしら? くらげのお兄さん。」
お兄さんは、はぁ・・・と大きくため息をつく。きっとくらげのお兄さんって言われるのが嫌なのね。でもあたし、この呼び方、変えるつもりはないの。ふふ、くらげのお兄さんは、この世で一人よ? 素敵じゃない!!
「あのな、この海月たちは俺が作った。つまり、俺が産みの親。わかるな? 」
色々聞いてみたいけど・・・今は聞くだけ聞くだけ!
「んで、これは幻影だ。」
げんえい…とは何かしら? と首をかしげているとお兄さんはう~と唸った後、
「幻、偽物ってことだ。これならわかるか?」
それならわかるわ、言葉って素敵ね。
同じ意味でもたくさんあるもの。あたし、使い分けなんかしたことないけど、ごみの分別みたいなものなのかしら。お掃除なら得意よ。
「〝人〟ってのは、稀に特別な能力、パワーみたいなのを神様からもらうんだ。それは、未来が見えたり心が読めたり人様々だ。みんなバラバラってこと。
だが、大人になるとみーんな忘れちまう。俺はなぜか覚えてるみたいだがな。
そこでだ、能力者以外にも能力のようなものを使えるやつがいる、それは、お前みたいな餓鬼、というわけ。お前らは好奇心旺盛だから、何にでものめりこむ。お前の場合は、海月。最近水族館とか行ったか?」
あたしはこくっと頷いた。ゴールデンウイークに水族館に行ってくらげをたくさん見た。ライトに照らされて自由に舞うくらげがとってもすてきで目が離せなかったのよ。また行きたいな。
「やっぱりそうか。つまり、お前は海月を好きになったから俺のが見えた。そういうこと。だがな、何があっても海月も、俺も忘れなきゃいけない。忘れることしかできない、この運命は変えられない。」
そういったお兄さんは悲しい顔をしたけど、これは簡単なことね。
「なら、忘れないように日記をかくわ!」
「お前、今の説明聞いたか? だから…」
「聞いた! だから、忘れたくないの!」
「勝手にしろ、それよりお前…それ…」
お兄さんは私が持ってる袋を指さした。袋?
「あ、おつかい! 帰らなきゃ! くらげさんたちお邪魔しました! また来るね!」
後ろから、もう来るなとか聞こえた気がするけどきっと気のせいね。
帰ったら、こっぴどく叱られてしまったのはお兄さんには言えません。
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