そして君は眠る

「ははっ…やっぱり君は、太陽みたいだ

…ほんとかっこいいなぁ」


やつれて頬がこけた君の顔は初めて見たはずのに。

君の顔を僕は知っていたような気がするんだ。

鼻の頭をクシャクシャにして笑うことも、歯を見せて笑うことも初めて知ったのに。

きっときみのくれた目のおかげかな。

ねぇ聞いてくれる?

太陽を見てくしゃみをしたんだ。

太陽は明るくて、輝いてて、目を閉じても光ってるんだ。

まるで君みたいだった。

大きな声に、握られた暖かい体温、それにむずがゆい空気…

僕は君に恋してたのかな。

なんてね…初めて友達が出来て本当に嬉しくて、こういう友達を親友っていうんだっけ。


先生に、君がどこにいるのか何回も聞いたんだ。

まだ目が慣れなくて、ぶつかったり転んだり、危ないって言われても君を探したかったんだ。

また、一緒に居たかったから。

話したかったから。

色の答え合わせをしたかったから。

「僕、これからいろいろと……っ

見てみたいものたくさんあるんだっ」

目を覆うように流れる涙が、後からあとから流れて君の顔を濡らしていく。

「だからっ…………?」

一緒に見に行こうよ、そう言いたかった。

君の目に巻かれた包帯が一段と暗く湿っていく。

握りしめた手が、息が、いつの間にか消えていた。

心電図は止まっていた。

冷たい一定の音が鳴り響いていた。

「あ」

握りしめた手は冷たく氷のようだった。

僕の手と君の手の体温がどんどん離れて行く。

さっき、笑いかけてくれたじゃないか。

「ああああああああああああ!!!!」

お願いだよ。

教えてよ。


「ああああああぁうぁぁぁぁぁ…」


先生達が駆け付けてくるその間、僕は君に抱きついて泣き叫んだ。

涙で歪んだ見えない目が何も映さなくなるまで、泣き続けた。

なのに、それなのに、その涙さえ流れ零れる様が見えるようだった。

それがまた、僕を嬉しいような悲しいような気持ちにさせた。



それから僕は病院を退院した。

退院したあと君のお葬式が行われたことを知った。

「………っ」

鏡を見るたび、僕の中の君に触れる。

黒い瞳の中に光がかる青。

笑うように顔を作ろえば、君が笑っているようだ。

時々、夢を見るんだ。

病院のあのベットの上で僕は必死に君を探していて、君はそんな僕に笑いかけているようで。

僕の知らなかった顔がそこにはあって…

今では少し不思議な気持ちなんだ。

僕の顔をきみの目が見ていて、君の見せてくれた映像が嬉しくて、楽しくてどうしようもなく辛くて…

まだ、立ち直れない。

でも、笑ってくれた君に前を向かなきゃとも思うから安心してね。

僕は君に教えてもらったよ。


「……これからもよろしくね」


君に見せるように今度は笑顔を作る。

飛びっきりの、君と笑いあった笑顔を。



そして君は眠る~end~

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そして君は眠る 来葉 紀 @konoha85

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