Shadow牧師〜永遠の愛、守ります〜

序章#カタリベ→ キリシマ

月村さん!僕、桐島っていいます!(1/1)



2031年、政府は少子高齢社会を立て直す為、4人兄弟以上の家庭を対象に消費税率5%引き下げ券の配布、すべての税の半額化、他にも幾多の優遇策を実施した。


そして、15年後。

人口は増加し、その内5000万人は15歳以下の子供となった。





「日本を子供だけの国・チャイルドカントリーにしてはいけない」


そう声をあげたのは1人の老人だった。

まだ21歳だった娘を小学校六年生の少年に殺された彼は「子ども」という存在自体を否定した。


彼は瞬く間に大勢の信者というべき同志を集め、行動を起こした。

彼らは自らを『ミラ』と称し、子供を少なくすることを謳った。



産婦人科を襲い、婚活パーティーをジャックし、ラブホテルに放火する。

また、全国の結婚式場を襲った。

そこで全国ウエディング協会は神奈川県横浜市に超大型結婚式場を設置し、普通の牧師の中にシャドウ牧師という、対ミラ用の格闘や操作能力に特化した牧師を紛れさせた。


それからというもの、ミラの工作員とシャドウ牧師は社会の裏舞台で激しい攻防を繰り広げている。













「あのね、お母さん……結婚することにしたの」


「え?」


「蓮人にも迷惑とか心配とか、かけちゃうかもしれないけど、私はその人のことを愛しているから、受け止めてほしいの。その人をお父さんとして認めて欲しい」


俺はその時まだ7歳だったからよくわからなかったけど、今考えてみると再婚のことを話す母親の顔は、女の顔だった。

俺の母親なんかじゃなかった。


それでも母親と立った二人きりで身を寄せ合って暮らしてきた俺は大好きな母親が1人の人間としての幸せを噛み締めている顔を見て、嬉しくなった。


「うん」


その時の母親の安堵の表情ったらない。

今になって考えると結構勝手なこと言ってんだなって思う。





結婚相手は地方公務員で母親よりも4歳年上の幸の薄そうな、髪は薄くなりそうなおっさんだった。


いい人だし、悪い印象も持たなかったけど、気を遣われてる感じが否めなくて、今でもあんまり馴染めない。







結婚式には、横浜の大きい式場を使った。

ここでやらないと、命が危ないらしい。

なぜかは知らないけど。




人はあまりいなかった。

少し年をとってからだし、お互い再婚らしいからあまり人を呼ばなかったらしい。


披露宴の間中、僕はおじいちゃんとおばあちゃんの間でパンを貪っていた。


「蓮くんは、パンが好きね」


「うん……」


「どうしたの?暗いね?」


「大丈夫だよ」


「ちょっと!その人止めろ!」


「え?」


心ここに在らずで、祖父が言ったかとおもったが、実際にはもっと遠くで若い男が言ったものだった。


そして、会場に男が走り込んできた。

声の主はこいつかと思ったが、男が自分の方に走ってきて、銃口を自分の頭に当てたことで、その思考はぶっ飛んだ。


「蓮人!」


母親の絶叫が部屋中に響く。


「蓮くん!」


祖母の涙声もきこえる。


「子供は、いらねぇぇ!消えろぉぉ」


男の唾が頭にかかった。

目をつぶる。







ドカッ!







ばきっ!








わぁぁぁぁ









確保ぉぉ!









ヤマ!ガードが甘ぇんだよ









………ツキさん!すみません!











いいんだけどよ………

こうして無事なら































目を開けると、30歳くらいの男が俺を抱えていた。


「大丈夫か?坊主」


「うん」


「なら良かった」


あの人はツキって人なのか、ヤマって人なのか。


多分、ツキの方なんだろうな。

そんなこと考えて、帰った。








その人たちがシャドウ牧師っていう人だっていう人だってことは後で知った。


そしていつの間にか、シャドウ牧師を目指して格闘技を習い始めて、大学生になって。


そして・・・・・・・・・・











「蓮人ぉぉ!今日出勤でしょぉ!」


「分かってるよぉ!起きてる!」


「朝ごはんできてるわょぉ」


「はーい!」


階段を駆け下り、飯を食べた。

横浜に借りたアパートに母親が今日だけ、来てくれている。





「じゃあ、行ってくるよ」


「うん。行ってらっしゃい」














「新しく牧師課に配属されました、桐島蓮人です。よろしくお願いします」


「じゃあ、桐島くんは月島さんの相棒ね」


「あ、はい」


課長が指差した先には、無精髭を生やした、いかにもダメ男という男が立っていた。

椅子で寝ている。


俺は月島という人の前に行った。


「月島さん!」


月島はカラダをビクッとさせて、目を覚ました。


「月島さん!僕、桐島っていいます!よろしくお願いします!」


俺の仕事が、始まった。





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