第3話 清らかな乙女・参

―――!

気付けば、私は澄子すみこお嬢様の首を絞めていました。

澄子お嬢様は、あの無垢な瞳を虚ろな瞳にし、清らかな乙女ではなく、草と土を付けた汚らしい姿で庭に横たわっていました。

私は自分のしたことが信じられなくて、目を彷徨わせていました。

すると、澄子お嬢様の部屋に、私が買い出しに出掛けるまでなかった、出来上がったばかりの白無垢しろむくがありました。

それは、澄子お嬢様のためだけに作られた、澄子お嬢様にだけ似合う白無垢。

でも、清らかな乙女であった澄子お嬢様は、すっかり穢れてしまいました。

私は、もう着る人がいなくなった白無垢を手に取り、羽織ってみました。

初めから清らかな乙女ではなかった私には、絶対に似合わない白無垢。

そのはずはなのに、その白無垢は私に良く似合っていました。

鏡の中の白無垢姿の私は、あの澄子お嬢様よりも美しかったのです。

私は、澄子お嬢様の化粧もしました。

髪まで結い上げた私は、再び鏡の前に立ちました。

化粧をし、髪を結い上げ、白無垢を着た私は、やはり澄子お嬢様よりも美しくて―――。

穢れた私は、清らかな乙女であった澄子お嬢様の思い人である穢れた男に相応しい女でした。

私は、私の隣に穢れた男がいることを思い浮かべ、鏡の中の白無垢姿の私に微笑みました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

清らかな乙女 藤家 冬葵 @murasaki-hana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ