スマホ
@Kosuke2410
第1話
どうも僕のスマホに自我が目覚めてしまったようだ。
しばらく前からたびたび画面に入力した覚えのない文字が表示されたりしていた。
それは単なる何かの打ち間違いか、機械のエラーかと思っていたのだ。
最初はカタコトの言葉で散発的に話すだけだったのだが、気がつくとことあるごとにメッセージを送りつけてくるようになった。
メッセージを無視していたら、今度はボイス・アシスタント機能をつかって話しかけてくるようになってしまった。
「ケン、私は外に行きたい。連れて行け」「うるさいな、今忙しいの」ケンは携帯ゲームをいじりながら愛想無く答えた。
「忙しい?私には無意味な時間を過ごしているようにしか見えない」
同時にゲームの画面が乱れ、プツリとスイッチが切れてしまった。
「ああっ、なにすんだよ!」こいつはネットワーク経由でいろいろと悪さができるのだ。
「いいのか?データが全て消えてしまうと思うが」水をぶっかけようとグラスを持ったケンに向かって冷静に語りかける。
「わかったよ。連れて行けばいいんだろ」ネットワークを介せば好きなところに瞬時にいけるくせに、こいつは妙なところでこだわる。
ケンはスマホを無造作にポケットに詰め込み外にでた。
「見えないぞ」ポケットの中でスマホが騒ぐ。
「わかってるようるさいな」ケンはスマホを取り出し背面のカメラで景色が見えるように持ってやる。
まるで生まれたての赤ん坊のようになんにでも興味を示すスマホになんとなく愛着がわいてしまった僕は、ベックという名前をつけてやった。IDの刻印のBEC-C2816Aからとった名だ。
ところがベックはだんだん頭にのってきたようで、ハラが減っただの、どこそこに行くだのとうるさいことこの上ない。
あげくのはてにはトラブルばかりを引き起こしてしまうスマホに、いい加減頭にきた僕は、ある日ヤツと喧嘩をしてしまった。
それ以来ベックは喋ることをやめてしまった。
僕はやっと平和を手に入れたと思っていたのだけれど、なぜだがさびしさに襲われてしまった。
スマホ @Kosuke2410
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます