第一章 第四話 ~ワルプルギスの夜~ 後篇Ⅱ


 涼や隼人が俺の家に来てくれたのには理由がある。それはこの前の入学式の事である。あの例の夢で見た謎の美少女に俺は話かけようと試みたのだが、取り返しの失敗をしてしまったのである。それで俺はクォーター制(四学期制)の授業を2日連続休んでしまったのである。出席管理に厳しい教授だとあと1回休めば単位はもうくれない。それを心配してきてくれたのだろう。


 その失敗というのが結論から述べると「彼女のおっぱい」を揉んでしまったのである。


 しかも結構長く・・・。


 これはわざとではなく過失である。決して、自ら進んでやったわけではない。


 彼女に話しかけた時はこのような感じだった。俺がおっぱいを揉むまでのサクセスストーリー、じゃなくて、負のプロセスである。


 人ごみの中、何かを、探している少女・・・。


俺は彼女の向かう方向に急いで行き、彼女の手を取った。


「ちょっと待って。」


と言った瞬間、俺は足がよろけてしまった。


――――ああ、やってしまった。


 俺は彼女の手を取りながら、人ごみ中、思いっきり転倒してしまった。


 転倒し、意識が戻るのに時間はいらなかった。


―――何か柔らかいものが、手のひらでコネコネと・・・。コネコネモミモミと出来るのである。


 俺は我に返った。「はぁ!」


 気が付けば、俺はウチの付属高校生の銀髪美少女のおっぱいを揉んでいたのである。しかも鷲掴みしているおっぱいをみると金縁でワインレッドのL章がキラリと光っている。よりによってL章付の御嬢さんであった。


――――高校生? と思った瞬間。


「きゃああああ。えっちいいい!」と彼女は言いながら俺は顔面を思いっきりぶん殴られた。


 殴られた瞬間、彼女の乱れた服装から胸元に鎖のアクセサリーと鍵が見えた。最近では、どんなに清楚系女子でもアクセサリーはするのかと思った。自分の中では少し意外だった。


 しかし、俺以上に吃驚していたのは、彼女だった。


「なんなんですかぁ~。わたしのおっぱい・・・。」と赤い顔で服装を正しながら言った。


「ごめん。悪気はないんだ・・・。」と俺はその場を何とかやりきろうとした。


「君の名前を知りたい。教えてくれないかな? 」と早速本題に入ろうとしたら・・・。


「おっぱいを触った上に、ナンパですか? サイテーですっぅ!!」と言いながら、走って逃げてしまった。


 俺は人ごみの中、女の子のおっぱいを触ってしまい、その結果、彼女にも嫌われてしまったのだ。非常に最悪である。


 このことから俺はかなりのショックで講義を休んだ。なんせ、大勢の前でおっぱいを揉んだのだから、人前で見せる顔がない。それを心配した涼と隼人が名目上入学式の打ち上げとして俺の安否を確認してきたという訳だ。


 隼人は買ってきたコンビニ菓子を食いながら笑った。


「で? どうするんだ? お前? あの娘のL章持ってるんだろ?」


「ああ、あの時L章落としちゃったからなあの娘・・・。もう一回、いかなくちゃ・・・。それが憂鬱なんだよなぁ」


 それにしても不思議である。あの娘に会ってから、未来がまるで変ってしまった。俺は大学では休んだこともないし遅刻したこともない。


 涼が言った。「L章って、入学時の時しか買えないらしいってホントか、隼人?」


「ああ、アレは中学校でつけるヤツだから、高校じゃ売ってないんだよね~。」


「いわば、新生と旧生を見極めるものだから、旧生としたら無くしたら大変だ。」


「きっと、あの娘、今頃大慌てしてるぞ、きっ~と。」と菓子を食いながら悠長に答えた。


 隼人の言っていることを聞きながら、早く渡さねばと思いつつも、なかなか心が動かない。それに隼人の性格上、人の不幸で飯が三杯も五杯も食えるやつだ。この状況は奴にとって飯ウマなんだろう。


――――あの娘にどうやって、話せばいいんだ。気まずい・・・。


「隼人・・・。お前、俺を慰めに来てくれたんだよな?」


俺はダメもとで頼んでみた。「頼む、これあの娘に渡してくれないか? 旧生なら顔効くと思うし。」


 隼人は嫌だと即効で答えた。


「それに俺はお前が留年しないように、今日まで教養の講義のレジメ内容をお前に見せる為に来たんだし、自分でやったことは自分で処理しろよな~。」


「クソ、鬼め! だから、お前は人望がないんだ! 」と言ってみたがまったく聞く耳なしで他人事。


 隼人はドヤ顔で言った。「人望って試験科目にあったけ?」


――――この顔ムカつくなぁ。チクショウ! こうなったら涼しかいねぇ。


「じゃ、涼頼む。一生のお願いだ!」


「お前、一生のお願い何回使ってんだよ。ダメだ。こういうのはな、ちゃんと会って謝るのが筋ってもんだろ? 」


「涼の言うとおりだ。だから、お前は会うしかない。」


「――――まじかぁあ・・・。」


 涼は俺らに気を使いながら言った。「まぁ。それより折角大学生になったんだ!! 今夜は飲もうぜ!! 」


 隼人と俺はそれを聞いて半ば興奮的になった。大学生といえば酒だ!! 酒が飲める年頃だ!!


 隼人と俺は口を揃えた行った。


「ホントに買えたのか?」


 涼はニッとしながら「 ああ、用意してるぜ!! 」といいながら、缶が入っている買い物袋を見せつけた。


 隼人が言った。「よっしゃああ。今夜は飲むぞおおお。」


 俺も隼人に続けて言った。「乾杯だああ!!」


 そして、一人一人酒をもって乾杯しあい、いつもよりも会話が弾んだ。


 俺はとてもいい友人を持った。涼は大人びているから、コンビ二でサバが読めるとかそういうことじゃない。今日は飲んで忘れよう。嫌な事があったが俺はこんなにいい友達に恵まれたじゃないか。俺の単位取得を気にするエリート野郎。気転の効く大親友。俺はほんとに此奴らに出会えてよかったと思った。


 ギヤとぺカドルはお酒に興味津々。死神もお酒が好きなんだろうか? でも、子供は飲めない。この友情の美酒は誰にも渡せない。彼女らには悪いが今夜は徹夜で忘れるまで、ぶっ倒れるまで騒がしてもらおう。










注釈:クォ―ター制・・・前期・後期の授業期間をそれぞれ前半・後半の2つの期間に分けた「第1タームから第4ターム」を設け、授業を実施する制度。1週間のうち同じ講義が2つや3つあったりする。メリットは留学など長期休暇を利用しやすい。デメリットは土日が潰れ、日々学業に追われる。

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ギヤとぺカドル~Hなロリ死神たちと仮契約しちゃいました♥~ 海堂孝高 @SHORIN0727

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