第九話 キャラがブレブレ

 辺りはすっかり暗くなっていた。


「────ぁぁあああああああああああああ!!」

「えっ?」


 竜を殺したのは良いけれど、帰り道覚えてないし、応援を連れて来るって言っていたのでとりあえずセシリアさんを待っていると、上から悲鳴の様なものが聞こえてきた。


「ひゃああああああああああああああ」


 その悲鳴の元は、凄い勢いで僕の目の前に落下してきて頭で着地(?)し、砂ぼこりを舞わせた。


「待たせたな」

「……誰ですか?」


 カッコ良く声も作っていい感じにみせているけれど、残念、頭が地面に刺さっててダサい。というか頭が地面に刺さってるのに何で喋れるんだ? この人いったいどこから声を出したんだ……??


「んっ……ぶぉっふぅー!!」


 上から降ってきた人は、変な声を出しながら、地面から頭を抜き、もう一度こう言った。


「待たせたな」

「いや、ダサいです」

「……うん、だよな。知ってたわ」


 なら何故やり直したのか。


「で、竜はどこだ! 俺はお前を助けに来たんだ!!」

「ああ……それなら、あそこに」

「うっそだろお前! 一人で……独りで殺ったのかよ……マジかよ!! 間近でマジカ……」

「それ以上はいけない」


 というか何で独りって言い直したんだ。あとそのネタはだめです。語感もいいけど、使いたい気持ちもわかるけど、だめです。


「しっかしお前、なかなかやるなぁ……新種の竜を初見で殺すとか、もうギルド本部でもトップレベルの強さだな!」

「えっ?」

「えっ?」


 新種なの? 岩竜じゃなくて? え? セシリアさん嘘ついたの? 僕ってそんなにセシリアさんに嫌われてるの? もしかしておっぱい控えめっていう心を読まれたからなの?


「これ、岩竜じゃ無いんですか……?」

「いや、どう見ても新種だろ」


 知らないけどさ。


「でも、セシリアさんとかレーナさんは岩竜だって……」

「レーナは目撃者から聞いただけだろうし、セシリアに関しちゃそんな余裕無かったんだろ。というかパッと見でわかるだろ」


 いや、パッと見でもわからないんだってば。……もしかしてこの人僕が使い魔ってしらないのかな。まあいいけど。


「あ、俺はディッツ=サザンディアな」

「スノウです。使い魔やってます」

「えっ! じゃあお前が例の人間使い魔マンか! ほーん、なるほどなるほど。ナルホドン!」

「いや、何ですかナルホドンって……」


 この世界の定番ギャグなのだろうか。僕には付いていけそうにない。あと人間使い魔マンてなんだ。


「──す、スノウさん!!」

「あ、セシリアさん」


 心の中でディッツさんに色々とツッコミをいれていると、セシリアさんが汗だくになりながら、必死の形相で走って来た。


 ……これがレーナさんは並におっきいおっぱいだったらぷるんぷるん揺らしながらこちらに走ってくる最高の図が見れたんだろうあ……っと、これはいけない。こんなことを考えているから嫌われるんだ。無心になれ。無心になれ、僕。


「ハァ……ハァ……。け……け、け」


 肩で息をしながら一生懸命呼吸を整えようとしている。吐息がちょっとエロいな、と思いました。が、嫌われたくないのですぐに無心に。


「毛? まだ生えてるよ? ……生えてるよね?」


 急に不安になって触ってみるが、大丈夫、ふさふさでした。安心してください。生えてますよ。


「け、怪我は!? 心は!? 平気ですか? 何とも無いんですか!!?」

「え、まあ……この通りピンピンしてますよ?」

「よ、よかったぁ~……」


 セシリアさんは僕が無事である事がわかると、その場に力なく座り込んでしまった。


 え、何かキャラ換わってない? もっとクールだったよね? ドライだったよね? 僕に対して辛辣ゥー! だったよね? この世界の人はキャラが安定してないのか? 今のとろブレて無いのおっぱい先生とレーナさんぐらいだよ? 大丈夫?


「ま、まあとりあえず帰ろっか。これ以上エルナちゃんを待たせるのも悪いし」

「ああ、エルナ嬢なら先に帰ってるってさ」


 えぇ……まあいいけどさ。一人で女子寮に入るのはメンタル的に来るモノがあるけれど、仕方ないかぁ……


「……ってセシリアさん? どうしたんです?」


 地面に座り込んだまま立とうとしないので、不思議に思い聞いてみる。


「……そ、その……恥ずかしい事に魔力の使い過ぎと、ここから街までの往復で膝が限界でして……」


 恥ずかしそうに──頬を赤らめるセシリアさんは可愛かった。非常に可愛かった。これがツンデレか……悪くない……悪くないぞ! ここが今回の萌えポイントですね、わかります。


「それに関しては僕にも責任がありますからね。良ければおんぶしますよ」

「す、すいません……」

「え、ずるくね? 俺がおんぶしたい!」

「だめです。ディッツさんここに来た時危ない登場の仕方しましたよね」

「確かに、それは否めない。命の保証はしかねる」


 というわけで、僕はおぶったセシリアさんのナビゲートのもと、街へと駆けた。


 背中の柔らかい感触からして、なかなかどうしてセシリアさんのおっぱいは大きく、「ああ、着痩せするタイプなんだなぁ」なんて考えながら走っていたのは内緒の話。

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全裸で異世界召喚された件 キリシマ @kirishima04

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