詳しくないので、こんな言い方でいいのかわかりませんが、元の話を感じながら、この話自体もちゃんと楽しめます。あの話がここで絡んできた、とか、自分の記憶をつまみながら。
神話の知識を得たくなる作品です。

　実は日本の古代神話系統には、明るくありません。聞いたことのある名前がたくさん出てきますが、それが古代史や神話と上手くミックスされていて、スラスラと頭に入ってきました。神話関係をもう少し知っていれば、もっと楽しめたのに。と、自分の無教養が悔しいです。とりあえず私は、海幸彦を応援したいですね。

　イサとは桃太郎の本名とされる吉備津彦の別の呼び名だったろうか……すいません。正直、温羅伝説はずいぶん前に読んだきり、詳細は忘れてしまった。

　歴史が深い日本には、皆が知る創作物としての物語と、その物語の源流となった実話とおぼしき伝承が沢山ある。

　この物語はそんな源流となった物語に、作者様の視点を加え、一つの物語として昇華されていた。
　歴史絵巻は視点と事実を絡めると、膨大な文字量を必要とする。
　よくぞ三万文字強の短編に収めることが出来たと感心するばかりです。

　
　と、堅苦しい事を書いてしまいましたが、難しいことはあまり考えないで、この物語に浸ることをオススメします。

　人の息吹さえ感じる世界観と、そこに居るという事実が紡ぎ出し生まれていく悲哀の物語。

　読んでみませんか？

　日本ではお馴染みの昔話と、古代史をモチーフにしているお話です。お陰で先の展開が予想出来たりもするのですが、この作品は一筋縄ではいかなさそうな予感。

　どのように伏線が回収されるか、楽しみです。