老害は強い。
「「なんだなんだ!?」」
「「じゃますんなよー!!くさいぞ!!」」
「「ばーかばーか!!」」
「「「「糞ジジイ!!」」」」
幼稚園児たちは一斉に未知の人間を罵倒する。
当然だ。たのしいたのしい行事の余韻に浸るところを邪魔されたのだから。
「・・・・・・。」
自分より300歳は年下の者たちのワメキを聞き、ゾンビは何を思うのか。
その沈黙からは、悟ることは出来ない。
「「なにだまってんだよー!!」」
「「「死ねー!!」」」
「石なげるぞー!!」
幼稚園児の1人が、石を投げつけようとしたその時!!
「やめなさい!!おじいちゃんを虐めてはいけません!!」
園長先生が割って入った。まだ若い。60歳ぐらいだ。
「なにか御用でしょうか?」
「・・・・・・・・。」
「すみませんが、ここは関係者以外立ち入ってはいけないことになっておりまして・・・・。」
「立ち入っていない。地の底から這い上がってきただけだ。」
「そうですけど、そういうことじゃなくて・・・・・・・・。」
戸惑う園長先生の顔面に、セミのパンチが入った。
地面に崩れ落ちる園長先生。
「いたッ!!何するんですか!?」
「そして『すみませんが』じゃない。『誠に申し訳ございませんが』だ。
言葉を知らないとは、嘆かわしい限りだ。今ここで腹を切れ。」
「がやがや・・・・がやがや・・・・。」
何が起こるのか、緊迫した事態に子供達はどよめきを抑えることは出来ない。
セミは『仲間』が生前愛用していた刀『魔刀楼蛾』を園長先生に渡す。
「ほ、ホンモノ!?」
昔日本では、侍はその愛刀と共に埋葬されることがあった。
セミに受け継がれたのは、魂だけではなかったのだ。
「なんだ、知らないのか?間違いは誰にでもある。
だが、それを償うには切腹するしかない。
それが、日本という国だ。日本人という人種だ。」
「うわあああああああああああああああ!!何なんですか、あなたは!!」
刀など見たことのないゆとり世代の園長は、実戦経験に乏しい。
だからこそ、必要以上に驚いてしまう。
今武器を持っているのは園長先生の側なのにも関わらず。
「私を知らないだと?最近の糞ガキはこれだから困る。
私は腹を切れと言っている。」
「知りようがありませんよ・・・・。あんたみたいな・・・・男は・・・・・・・・
あれ・・・・・・・・もしかして・・・・・・・・。
ああああああああああああああああああああああああ!!」
園長先生は思い出してしまった。
「あなたは、初代園長先生!!」
「そうだ。私は初代園長先生である。だが、それだけではない。私の体には、2000万もの叡智の魂が眠っているのだ。私は初代園長先生であるし、伝説の侍『紅海月』でもある。もちろん歴代の警視総監であり、伝説の大物ジャーナリスト『グラスゴーX』でもある。私たちが、栄光の日本を作り上げた。そして、全てこの飛騨霊園に埋められた。」
「・・・・・・・・。」
「しかし、それを冒涜したのは貴様だ!!
その罪、断じて許されることはない!!」
「うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
この瞬間、確かに山本セミの背後には見えたのだ。
数多の『伝説』の霊が。
園長先生は悟った。目の前にいるのは寂れたジジイゾンビではない。
『近代史』そのものなのだ、と。
「これは、これは、失礼いたしました!!」
「理解したか?私に名前は必要ない。
私は『グランドファーザー』。全ての、父、だからだ。
分かったなら、腹を切れ。これは命令だ。」
「仰せのままにぃ!!」
園長先生の手が、魔刀に伸びる。
このまま、園長先生は死んでしまうのだろうか。
そう思った矢先、勇気の一声が響いた。
『園長先生!!くそじじいの言うことなんか、聞いちゃ駄目だ!!』
激昂するグラファ。
「誰だ・・・・?今、私を、ワシを、俺を、僕を、小生を、『歴史』を愚弄したのは!?名乗り出ろ!!即、このグラファが、斬り捨てる!!」
恐ろしい殺気に包まれる幼稚園。
しかし、勇者が黙ることはなかった。
「俺だ!!『王雅Jr』・・・・。すごい人間だ!
歴史!?聞いてあきれるぞー!!俺はロックの神様になる男だー!!」
「何かと思えば・・・・。若い・・・・。若いな・・・・。
残念だ。4歳にして人生を終えることになるとは、な。
・・・・。ロックの道を目指すのなら、ワシの顔に見覚えはあるか?」
真っ先に気がついたのは、王雅の父、王雅Sr。
「・・・・・・・・。あなたは、あの伝説のロックバンドのボーカル、『キツネトルネイド』ですか!?」
「覚えていてくれてうれしいよ。王雅くん。元気か?
だが、君の息子が少し無茶をしてしまったようだ。
だから、死刑になってもらうことにする。」
れくいえむ・いん・ざ・きんだーがーてん 深海 @homepagecrasher
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