れくいえむ・いん・ざ・きんだーがーてん

深海

冒涜の代償はあまりにも重かった。



飛騨マリア幼稚園。


多数の児童が通うこの幼稚園は、春はあけぼの、夏は夜、秋は夕暮れと楽しい行事がてんこ盛り。とくに目を見張る行事が毎年この日に庭園で行われる「えんそう会」。


このえんそう会、えんそう会ではない。


なんと、各自演奏したい楽器を持ち込んで良いのだ。

パイプオルガンからケツドラムまで、どのような楽器でも許されるのが飛騨マリアを飛騨マリアたらしめている要素。

このえんそう会で才能を見出され、栄光の道へ進んだ児童は数多いのだ。


今年もえんそう会では皆個性を発揮しつつ、うまく調和している。


その中で一際注目を集めるのは、バンドマン「王雅Jr」。

王雅Jrとその父、王雅はなんと親子にしてバンド仲間である。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

 ぞうスゥン!!ぞうスゥン!!どぅしてそんなにお鼻がロングなんだい?」


ギターをかき鳴らす王雅Jr。

湧き上がる会場。


そう。調和しているとは言ったが、あらゆる他楽器は彼の引き立て役に過ぎなかった。これは調和というよりかは、抑圧かもしれない。


しかし――――

この世のものとは思えない熱狂の下では、恐るべき計画が進んでいたのだ。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「許せんな。」


山本セミ(故)は腐った体をその地下に埋めながら、仲間とテレパシーで語らう。

死者の魂は、他の魂と語り合うことが可能なのだ。


「うるさい!!これじゃあゆっくり眠ってられんわ!!

 死者の眠りを妨げるクソガキどもを許すわけにはいかん!!!」


鶴丘ハル(故)、猛る。死者の眠りを妨げるものに、天罰を下す。

それが当然のことであると、少なくとも埋められた老害どもは思っていた。


「ワシらの墓をすべて潰し、その上にかのような煩い施設を建てるとは。

 万死に値する!!皆殺しだ!!」


「ああ、セミさん。頼むぞ。

 この70年間の間、ここに埋められた数多の魂。

 冒涜者への裁きのためなら、喜んで差し出しましょう!!

 皆、準備は良いか!?」


2000万の魂が呼応する。


「「「「はぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」」」」


力がみなぎる。

セミの体に魂が終結していくのだ。

老害どもの意志が、一つになった以上、その莫大な魂のエネルギーがセミに宿るのは自然の摂理、そういわざるを得ない。



「ああ、行ってくる。」

セミは、確信を持っていた。


今の自分なら、2000万の魂を背負う自分なら、やれる!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「そぅよ、マザーファ●カー!!マリア様も、長いのよォォォオオオオ!!」


「「「わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」」」


歓声と共に、おゆうぎ会は終了―――


ボゴォ!!


「!?なんだよ!?じめんにヒビが!!?」


地面が裂け、そこから何かが這い上がってくる。

人々はそれを見つめることしか出来なかった。

すさまじい怨念と邪気を放った何かが這い上がってくるのだから、

うかつなことはできないと本能で感じ取ったのではないだろうか。


「くるぞ!!」


完全に這い上がった人型のそれは、しばしの間突っ立っていた。


「・・・・・・?ジジィ?」
















「こりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

 静かにせんかぁぁ嗚呼ああああ嗚呼あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」



しばしの静寂を破ったのは、ゾンビジジィの張り裂けんばかりの怒号。


そしてそれは、血みどろの世代間闘争の幕開けを告げる、ギャラルホルンだった。

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