第21話アンデットの逆襲
「おはよう、3人とも」
『おはようございます。エル様』
毎日は平凡なもので、今日も一日が始まる。
今朝からメイド業務も再開。そららはいつものように調理場で朝食作り。
私とアリシアは裏庭の菜園で野菜の摘み取りと水やりを担当した。
アリシアも最初はわかりにくかったようだけど、どっちの世界も食べ物は似ている事はすぐに理解したようだった。
時計が朝8時を知らせる。
食堂には、時計が8時を知らせる金属音が響くと、扉が開きヴィルサーナ領領主、エルドロールが入ってくる。
私たちはエルドロールの座る椅子のそばに待機し、アリシアが椅子をひく。
そららが料理を並べたり、お皿に盛り付けをする。
私は食器を用意したり、コップに飲み物を注ぐ。
すべての準備が終わると
「お待たせいたしました。エルドロール様。どうぞ、お召し上がりください。」
セリフ棒読みのアリシア。
「んふふ、くく、・・あはは!いや、よくできてる。一日でここまで頑張ったもんだ」
エルドロールは私たちの顔を順番に見て一応褒めてくれる。
昨日、寝る前に3人で明日の朝はメイドっぽく頑張ってみよう!主役はアリシアで!
と作戦を練っていた。練習はなく、流れをそららから聞いてイメージ。最後のセリフは気持ちがなく棒読みだったけど、それでも大したものだと思う。
「あ、あの。エルドロール、様。アリス・・・ここにいたい。いさせてください」
ペコリと頭を下げてお願いする。私も、一緒に頭をさげる。
「んー。身元不明の少女・・・と言いながらもヘルムの村の生き残り。王国に知れたら一大事なんだが・・・」
「そ、そんな。エル様、どうか考え直してはいただけませんか?」
アリシアの小さな体が震えている。
昨日も聞いたけど、王国は体裁を保つためにヘルムの生き残りを殺すつもりだと思う。この場合、アリシアは王国に引き渡すものなんだとは理解している。でも、それでもどうにかなれば・・・。
心のどっかで、エルドロールがどうにかしてくれるのではないか。
と、私たちの甘い期待だった。
「でも、私は君たちの親だと思っている。そらら、書簡を。」
「はい。」
そららは食堂の外に出て行った。
「アリシア。君からは不思議な力を感じる。きらら、記憶をなくした君と同じね。」
「お待たせしました」
そららが細長い深緑の丸い筒を持ってくる。
「うん、ありがとう。それでは、読んでくれ」
「かしこまりました。」
そららが筒のふたを抜く。中には紙が一米入っていた。
「私は、二人がここにいることを何か意味があると考えている。」
「失礼します。・・・・」
そららが中の文書を読む
バタン!!
「失礼します!領内にアンデットの存在を確認!至急王都まで避難してください!」
扉を勢いよく開けると今日も朝から護衛の任務を行っていたアークが飛び込んできた。
「もうここまできたか!3人とも、話はこれで終わりだ。急いでアレクサンドリアへ向かいなさい!フランを探せば助けになってくれる!」
るドロールの口ぶりに違和感を感じる。が、今はそれを考える余裕がなかった。
せっかくのごはんは、手を付けられることなく、そのままとなってしまった。
そららはあまりに急な出来事に驚いていた。ここは王都のそば。アンデットは入れないはず。そういったのは彼女だ。
「そんな、まさか!!・・・エル様はどちらに行かれるんですか!?私たちだけなんて、無理です!」
「無理じゃない。今は時間がないんだ。わかってくれそらら。私がアンデットごときに負けるわけがない。
アークも一緒だ。1000体でも倒して見せよう。」
「アリスも残る。アリスがいれば、魔法が使えればアンデットを倒せる」
「私だって、弓が使える!!」
「うちだって、剣が」
「五月蠅い!!!」
食堂にエルドロールの声が響いた。
「私は。負けない。3人とも、こっちにおいで」
急に怒鳴られたことでシュンとした私たち。トボトボと3人は集まり、エルドロールの前に並ぶ。
「怒ってすまない。娘たちを危ない目に合わせる親がどこにいる。必ず後から行く。今は信じて待っていなさい。」
誰も返事をしなかった。
返事ができなかった。
怒られたショック、とは違う。本当に、力になりたいのに役に立てないのが悔しい。
正直、まともに戦えるのはアリシアくらいだろう。
「絶対、迎えに来てくれますか?」
そららが、重い口を開いた。
「あぁ。必ず行く。明日もそららにご飯を作ってもらわないと。我が家の料理は王国一だからね」
頭をポンポンと叩いてくれる大きな手。
「迎えに来なかったら、どうするの?」
「その時は、この屋敷をきららにあげちゃおう!大きな家が欲しいと小さいとき言ってたしな」
「今は、そんなものいらないもん・・・。」
ワシャワシャっと頭をなでる。というよりかき回すような感じで髪を乱す。
「アリスは、不安。待つなら、一緒に戦いたい。守れる命もあるかもしれない」
「君は強い。もしかしたら私よりも。だからこそ、信用できるアリシアに守ってほしい。この二人を。もちろん、君自身も。アレクサンドリアに迎えに行く時まで、君の魔法で守ってほしい。」
「・・・わかった。お姉ちゃんたちは私が守る。」
アリシアに指輪を渡すエルドロール。
「これはなに?」
「マジックアイテムさ。・・・お守り。と思ってくれ。」
アリシアの指は細く、仕方なく親指にはめた。
「勝てるの?」
アリシアのつぶやきにエルドロールは自慢げに笑った。
「大地を焦がす地獄の炎。我が魔力を糧とし、彼の地より我が呼び声にこたえよ!来い!フレイア!!」
食堂が一瞬煙で覆われると、目の前には見慣れた羊が浮いている。
『フレイア!!』
「どーも、今回はこっちに呼ばれましたね。アリシア、いい子にしてるんだよ??」
「なんで、フレイアが?」
「そんなの、アリシアならわかるでしょ?僕の契約者はアリシアだけではないってこと。」
「エル様、もしかして・・・」
「そう、だからそらら。僕よりもアンデットの心配をした方がいいかな。」
「フレイアの裏切り者・・・」
「アリシア、そんなこと言われても、精霊は万物に平等な立場を・・・」
ドン!!
玄関の方で大きな物音が聞こえた。
「アーク様!アンデットを肉眼で確認!数、およそ100体!近づいてきます!!」
屋敷中に響くような大きな声で外の兵士が悲痛にも感じれる声で叫ぶ!
「きらら、そらら、アリシア。アレクサンドリアで会おう!」
私たちは調理場の裏にある勝手口へ向かい、モンスターに見つからないよう馬車に乗り王都へ目指す。
ゴォォオオォオン!!
中庭の方ではエルドロールとフレイアの使ったであろう爆裂魔法が大きな黒煙を上げていた。
異世界3姉妹の日常的冒険物語 き・そ・あ @sorara
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