エピローグ ヒロインになんか絶対にならないっ!

 たしかにそれは欲しいものではあった。

 が。


「ふざけんなーっ!」


 私は出てきたプレゼントの正体を前に叫んだ。


「ふざけてなどおらぬ。それこそお前や神々読者が今一番欲しいと思っているものだ」

「神々なんて知るかーっ! 私が今一番欲しいのはお金、一千万円なの!」

「それは神々には人気が無くてな。お前と神々の欲しいものリスト上位を照らし合わせた結果、これになった」


 男が大袈裟な箱に入れられたプレゼントを指差す。

 セーターだった。

 セーターだけだった。


「ちなみにお前が着用できるのは、これからは余からプレゼントされた衣服だけになっておる」

「ええっ!? なによそれ!」


 私は慌ててクローゼットに駆け寄る。

 ぐぐぐ、あ、開かない……。


「そういう仕様なのだ。まぁ安心するがよい。プレゼントは今日だけでなく、一日一回ガチャれるようになっておる」


 なお必ず下着が当たる十連ガチャには、これまた一千万円が必要な模様。お前もぼったくり運営かっ!?


「なお今日は初ログインでありクリスマスイブという特別な日でもあることから、本当はURパンツをプレゼントするつもりであった。が、一部の神々から『穿いてないこそ至高』という強烈な思念を受け取ってな。シミュレーションの結果、なるほどその通りとなった次第だ」

「なにが『なるほどその通り』だ!」


 ふざけるなぁ。一千万円じゃないなら、せめてパンツだろォォォ!

 それになんでセーターなんだよ!


「さて、では余の見立てが正しかったことを証明してみせよう」


 男がまたパチンと指を鳴らすと、箱の中のセーターが消え失せた。


「わぷ!」


 そして私はいつの間にか素っ裸にセーターだけという姿に。


「って、なんだこれーっ!」

「ほほう。さすがは『童貞を殺すセーター』。素晴らしい!」


 箱に入っている時は、単なるタートルネックのセーターに見えた。

 が、実際に着て(着せられて)みると、何故か背中がぱっくりと開いて、おしりがこれでもかとばかりに自己主張するエロセーターだと分かった!


「童貞を殺すセーター? むしろ私の純潔が心配だわっ!」

「ふっふっふ、これぞ女の子のファッションに疎い神々でも、この名を聞けば「ああ、あれか」と瞬時に思い浮かぶことが出来る、まさにエロキャラには欠かせないマストアイテムだ」

「誰がエロキャラだーっ!」


 私はワナワナと震えながら右拳を固める。

 左手はセーターを引っ張って股間を隠すのに必要だけど、右手は自由だ。そう、この右手はまさに男と、ろくでもない神々への反逆の鉄槌。


「さぁ、これから忙しくなるぞ。まずは冬休みも終わり、学校への登校初日、なんとか制服はゲットしたものの、下着を手に入れられなかったお前はまさに穿いてない状態のまま学校へ……」


 自慢げに二話移行のプロットを語り始める男に、私は正義の拳を大きく振りかぶる。


「そこへ超絶イケメンの余が転校してくるのだ。おおっ、なんと今後を期待させる展開であろうか」

「なにが今後への期待だ、この、お、ば、か、サ、ン、タ、めぇぇぇぇぇぇ!」


 そして男の顔面めがけて抉りこむように拳を打ち込んだ!


「ヒロインになんか絶対にならないからなーーーーっ!」


 おわり。

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ヒロインになんか絶対にならないっ! タカテン @takaten

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