第3話 一時間半前

 俺はズボンの左ポケットに入れていたスマートホンで現在時刻を確認した。

「検証開始まで、あと一時間半か。懐中電灯とかの準備を先にした方がいいと俺は思うけど、牧野さんと河野はどう思う?」

「私も準備は先に済ませといた方がいいと思うけど、秋乃はどう?」

「そうね。あたしも一度、家へ帰る前にコンビニで新しい日記手帳を買っておきたいから賛成するわ」

 河野と牧野さんも俺の提案に賛同し俺達は一端、家路に着くことにした。


 帰り道を歩いて数分が経った。家に帰る道が途中から違うため、俺と河野は牧野さんと別れた。

「牧野さん。約一時間半後、学校裏の秘密の抜け道前に集合で」

「前に言っていた例の場所ね。日々風君、ありがとう」

「どういたしまして」

「冬音、また後でね」

「それじゃあね、秋乃」

 牧野さんは俺と河野に手を振った後、家の方向へ帰って行った。牧野さんを見送り俺と河野も自宅の方向に歩いた。歩いている途中にふと、河野が不安そうな顔をして俺に尋ねてきた。

「圭君、私気になっていたんだけど本当にこの計画、大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。裕人と一緒に下調べもしてあるし」

「それなら、良いんだけど…」

「裕人の言葉を借りるなら、完璧な検証計画だよ」

「笠地君が言いそうな言葉ね」

「そうだろ?笑」

「そうね(笑)」

 しっかりとオチがついたところで、お互いの自宅に到着した。

「それじゃあ、一時半後に集合で」

「了解。圭君も間違えないように」

「そら、そうだ」

「じゃあね…笑」

 そう言った河野の屈託のない笑顔が眩しかった。そう、今宵こよいの満月の様に…。

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『月下(ゲッカ)のプールサイド』 新庄直行 @Shin__Nao

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