death of investing
経済マン
第1話
株。。。
それは資本主義社会が生み出した実態のない価値である。
あるものは娯楽でそしてあるものは人生を賭けて、株取引に没頭していくのである。
「ここはどこなんだ」
拓郎は小さく息をし、誰にも聞こえないような呟いた
どうやら、隣にも誰かいるようだ。
「誰かいるのか?」
そう尋ねると、答えが返ってきた。
「いるぞ、俺の名前はシンジだ。
ところでお前は誰なんだ」
拓郎はなぜ赤の他人が、狭い部屋に押し込まれているのかが分からなかった。
そんな拓郎をあざ笑うかのような声が聞こえる
「始めてまして。お二人さん。
インベストマスターのハジメです。
突然ですが、あなたがたに株取引ゲームを行ってもらいます。いまからあなたがたに電子マネーで100万円を軍資金としてお渡しいたします。
禁止事項は、予め株価が上昇するであろう情報をその企業の人から聞く、インサイダー取引です。
それ以外に禁止事項はありません。
1週間後に株の時価総額が多かったほうのかちです。
敗者には残念ですが死んでいただきます。」
拓郎は頭が真っ白になった。
自分の運命を嘆いた。
ただ生き残るためには勝つしかなくなったのである。
「それでは検討を祈ります。」
インベストマスターの声からこの勝負が始まったのである。
「この勝負、相手を欺くのが勝負の決め手だ」とお互いに察しがついていたのである。
拓郎はまず相手の素性を探ることにした。
ハジメはインターネット業界でトップシェアを誇る企業の社長の息子であったのだ。情報戦では確実に不利だ。
1日目、情報を得るための新聞が一部ずつ送られてくる。
そこには世界のニュースなどが載っており、その情勢によっては円の価値が上下し、日本企業の景気を左右してくるのである。
お互いに様子を伺いながら6日間は何の株も売買せず、最後の1日を迎えた。
最後の1日、朝刊にはいつものような文字の羅列が並んでいたが昼の11頃自体が急変した。
「ヨーロッパの情勢が悪いほうに変化した!!このままだと円高になって、輸入を中心とする企業の業績はうなぎのぼりだ。僕はA社の株に100万円全部を突っ込むぞ」
ハジメは叫んだ。
インターネットニュースを見る。
そこには「ヨーロッパ経済悪化。日本円の信用が上昇円高に拍車」などという文字が溢れていた。
なるほど嘘ではないらしい。
「僕も輸入業を中心とするB社の株を大量に買うことにするよ!」
拓郎は真剣な眼差しで、株取引を始めた。
数時間後、ハジメは高笑いを始めた。
「拓郎ぉぉお!ハメられやがったな!!
お前、俺がインターネット業界のトップの社長ということを忘れたのか!
残念だがお前の見たネット記事は全部眉唾だったんだよ!!今日の朝から今まで何の情勢も変わってねぇんだよ!!
俺は今朝の朝刊で業績が3000億円UPのC社の株を買わせてもらった!!
今日、1日は株価上昇がとまらねぇだろうなーー!
お前はインターネットが簡単に改竄できるということを軽視しすぎたんだよぉぉお!はっはっはっ!」
「簡単に改竄出来るのはインターネットだけか??」
拓郎が不敵な笑みを浮かべる
さらに続けて、「確かに、C社の業績は3000億円変化しているがよく見てみな」
ハジメは朝刊をよく見てみる。
「3000億円と書いてある上にすこし色が違う紙が貼ってある。。気づかなかった。。」
ハジメはその1ミリ四方ほどの紙を剥がしてみた。
「▼。。。。
この▼ってどういう意味だ。。。」
「それは赤字って意味なんだよ!!!
おれはその小さな▼を隠させてもらった!!
お前は紙媒体も改竄できるという可能性を軽視しすぎたんだよぉぉ!」
「嘘だろ。。。。
c社の株価がどんどん下がっていく。。
嫌だ!!
死にたくない!!
嫌だぁぁあ!!!!!」
ハジメの叫びも虚しくタイムリミットである5時を迎え、ハジメの命も価値を失った株のように消えていった。
戦いは終わった。。
拓郎は生き残ったが、株というものを見るたびにあの時の恐怖がフラッシュバックする。
本当の勝者はこの戦いにはいないのかもしれない。。。
END
death of investing 経済マン @yuhei888
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。death of investingの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます