輝政初陣

天正6年5月、輝政が元服して2ヶ月がたった頃、長政と輝政のもとに織田領の播磨・上月城攻略に従軍せよという命令が届いた。

「いよいよ初陣、腕が鳴ります」

初めての戦に期待する輝政とは逆に、長政は慎重になっていた。

「されど、そなたはまだ11だ。初陣ということに加え、相手はあの義兄上、くれぐれも無理はしないように」

「はっ、浅井の武名に恥じない働きをいたします」

こうして出陣した長政と輝政は、高倉山に布陣する織田勢と対峙した。

上月城を包囲した毛利軍は、兵糧攻めで籠城する尼子勢の士気を下げていった。

そんな中、高倉山の織田勢が毛利の陣に攻撃を仕掛けてきた。

「浅井勢に織田の援軍との戦闘を命ずる」

包囲軍の大将、小早川隆景の命で、織田勢と交戦することになった。

敵の大将はくしくも、小谷城攻めでも戦った羽柴秀吉だった。

秀吉の采配で、徐々に押されていく中、輝政が、突然陣を飛び出した。

「我は浅井備前守長政が子、加賀守輝政である。いざ勝負!」

「馬鹿、輝政、前に出すぎるな!」

長政の言葉も聞かず、数名の兵と敵の深くに突撃していった。輝政の気迫に押され、敵兵は逃げ出すものもおり、浅井勢が優勢となっていた。

そのまま浅井軍は勝利したが、輝政は左手を負傷してしまった。

2ヶ月後、上月城は落城、尼子家は滅亡し、尼子勝久は自害、山中鹿之介は謀殺された。

初陣を勝利で飾った輝政だったが、休息の暇もなく、毛利家はすでに次の戦に向かっていた。

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小谷城の決断 〜浅井家再興の夢〜 @michinoku_bird

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