第九話 翼

小学校生活もいよいよ大詰めを迎え、聖二と良太は6年生になっていた。

小学校生活も最後になり、どこか寂しい気もした。

何か一つ思い出を作って卒業したい、そう思った。良太に訪ねる。

「良太、卒業する前に何か一つ思い出を作って卒業しないか?」

良太は言う。

「たとえば?」

若干沈黙が入る。すると良太はなにか、ひらめいたかのようにぺんを取りだし、紙に何かを書き始めた。そこに書かれていたのは、"10年後の自分へ"と書かれてある。

「これは..」

良太は言う。

「10年後の自分に手紙を書いて箱に入れて、土に埋めるんだ。タイムカプセルだよ。」

なるほど。今はどれだけの子がこれをやっているかは知らないが、この時はわくわくが止まらなかった。

早速、自分への手紙を書く。

"10年後の自分へ"

この手紙を読んでいるということは10年が経っているということだね。10年後の世界では元気に過ごしていますか?彼女はできましたか?

そして、自分が抱えているしょうがいの悩みは解決できましたか?何があっても絶対に負けない自分に成長していることを信じて、さらに10年後を楽しみにしています。では元気で。


良太の書いた手紙と一緒に聖二の手紙も箱に入れ、土に埋める。

学校のグランドから少し離れた所に大きな木がある。そこの木の下に箱を埋めた。

季節は変わり、冬へと入った。雪が深々と降り積もる中、聖二は走っていた。

もうすぐ卒業間近で寝坊をこいた。

「やばいっ!間に合わない!くそっ!」

やっと学校に到着。ダッシュで教室に入るが、チャイムが鳴ったのと同時に教室入り。先生が言う。

「聖二君。よく来たね。早く席に座りなさい。」

聖二は怒られると思ったが、そんなことはなかった。先生は生徒にこんな話をしてくれた。

「小学校生活は中学校や高校よりも長い6年間もあります。この6年間は皆さんにとって物凄く貴重であり、多くのことを学ばせてくれたと思います。中学校に行ってもこの6年間の思い出と6年間で学んだことを忘れずに前へ進んでください。」

教室内が静かになり生徒達は真剣な眼差しで先生を見つめていた。

そしていよいよ別れの日が淡々と近づいていた。

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宝物を手に入れた少年 カラアゲ @just0917

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