感情の研究 -正体-

夢蒟蒻

感情の研究 -正体-

博士は喜んだ。 

ついに研究が実り、人の感情の正体を明らかにすることに成功したのだ。 



研究は苦難ばかりで、「感情」と一つに括ることはとてもじゃないが出来ない、そんな複雑な処理パターンの連続だった。 

『こんなの、外の現象の把握の方がよっぽど簡単じゃないか』 

それが博士の成功の鍵だった。 


それから、感情の正体を明確にするために、それに纏わる現象を洗い出した。 

脳以外全てを把握することで脳を理解する、そんなアプローチを続け、ついに、感情の正体を明らかにしたのだ。 





それから研究の成果を発表した博士は、まもなく殺される。 


博士がとある研究者の苦しみの正体だったのだ。 


行われたのは『正体狩り』 


これは、世界中で行われた。 


これがまた苦しみを生み、 

世界は混沌と化す。 





どんなにある人の喜びの正体であっても、かならず他の誰かの苦しみの正体であったりするものなのだ。 







しばらくすると、感情の正体を算出するコンピュータに限界がきた。 


するとどうだろう。世界中の苦しみの正体が、とある一点に集結したではないか。 


全ての苦しみの正体は、博士の研究。 



すぐに世界中のコンピュータは破壊され、博士の研究に纏わる全ては焼かれた。 



世界に久々に正体不明の安堵と正体不明の幸福が訪れる。

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感情の研究 -正体- 夢蒟蒻 @yume-kon-nyaku

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