第3話 隣人
絶滅回避プロジェクト
現在研究部門総出で、この未曾有の危機に対処するべく事前調査が行われている。
先の報告書に挙げていた、生存に適さなくなった惑星の目星をつける為だ。
同時に、新たなる恒星間調査船建造の準備と、人員の確保も行われている。
グレゴ暦2202年8月2日
恒星間調査隊がジプティス星系第1惑星ジプティス1にてアノマリーを発見。
報告書によると、センサー波への反応からこの巨大なガス惑星であるジプティス1の大気の奥底に、何らかの建造物が存在することが判明したとのこと、調査隊は同日この物体の調査を開始する。
グレゴ暦2202年10月6日
ジプティス1のアノマリー調査完了。
調査の結果、調査船サッチはジプティス1の大気中の深い場所にある、建造物から奇妙なエネルギー信号が発せられている事を確認。
詳しく調べるために接近を行いたかったようですが、大気圧により接近はできないと判断。
これ以上の調査は現状できないとの報告でした。
しかし、この調査により貴重なデータを取ることに成功した模様。
今後の科学技術発展の礎となることを期待する。
マスターにこの概略書を渡し、この調査は完了とする。
グレゴ暦2202年12月5日
恒星間調査隊ジプティス星系調査完了。
当初の予定通りジェター星系の調査へ赴くため移動開始。
ここでは、生存が可能かもしれない惑星ジェター3があり、殖民への期待が高い。
「マスター、恒星間調査隊がジェター星系へと移動を開始いたしました。」
「そうですか、たしかあそこは居住可能な環境である可能性が高い惑星があったはずですね。」
「はい、我々政府の関心度が高いのは当然として、市民の方々の興味も多く注がれています。」
「えー、調査が終わるのが楽しみですね。」
グレゴ暦2203年1月2日
予てより計画を行っていた、絶滅回避プロジェクトの事前調査も滞りなく進む中、本日ガガーリン級調査船ディスカバリーの建造が開始される。
ただし、表向きは恒星間調査が目的と公表されている。
グレゴ暦2203年2月4日
軌道エネルギー変換システム研究完了
これは、ステーション上で恒星からの光を用いエネルギーを生産するシステムと、それを電波を用い輸送するシステムのことを指す。
今まで地表で行われていたアドニア(太陽)光発電システムだが、大気を通過するときのエネルギー拡散が、著しくエネルギー生産量を低下させているのは周知の事実だった。
それに対処するために考案されたのが、この軌道エネルギー変換システムである。
建造の準備が出来次第、軌道上の宇宙港に設置予定である。
グレゴ暦2203年3月3日
調査船ディスカバリー建造完了。
調査隊の編成後速やかに出航する。
人員の確保が急ピッチで進められたため、仮想シミュレーションを用いた訓練しか出来ていない。
実地訓練は文字通り、目標地点にて行う予定である。
なお、恒星間調査隊が2部隊になったことにより、名称の変更がある。
先に出発していた隊を第1恒星間調査隊、今回出発する隊を第2恒星間調査隊とする。
そして、この大任を任されたのは、絶滅回避プロジェクトの基幹研究員であるヒヨリ・サイトウだ。
ヒヨリは今後第2恒星間調査隊の隊長として、本プロジェクトを牽引していく。
「ここに絶滅回避プロジェクトの開始を正式に宣言します。
第2恒星間調査隊隊長、ヒヨリ・サイトウ。
今後の貴君と調査隊の無事の航海を祈ります。」
飾り気のない言葉、しかし、普段よりも幾ばくか緊張した面持ちだ。
ここ数年の付き合いだが、だいぶ表情が視えるようになってきたものだ。
グレゴ暦2203年6月3日
ナノ工学の研究完了
これにより新たな研究機関が発足され、今まで活用されていなかった各種資源の研究が加速することとなる。
この研究機関では、今後3種類の資源の研究を行う予定になっている。
スペシャルミネラル
様々な鉱石を精製する際、触媒とすることで高効率な生成が可能と目されている物質。
ナノ合金
多種多様な建造や製造の分野において、様々な活用法を見出す研究が行われる。
ナノプラスチック
半合成有機化合物、成長・再生・変化・励磁の特性を外部からのプログラムで制御が可能な万能物質とも呼べる素材。
グレゴ暦2203年8月4日
アルファエイリアン調査報告書
便宜上アルファエイリアンと呼んでいた存在は、宇宙に生きる生命の形態だった。
分析担当官が、センサーの出力情報を完全に誤読したことによって、「宇宙アメーバ」という愛称をつけられたこの生物は、実のところ我々が保有するコルベット級よりも巨大だったのです。
更なる研究を行う必要があります。
リモート監視による生態調査をする予定です。
許可を願います。
しかし、どう間違えれば宇宙クジラを宇宙アメーバと読み間違えるのか、不思議でしょうがない。
この分析官は、大丈夫なのか?
グレゴ暦2203年8月16日
ベータエイリアン調査報告書
我々が便宜上ベータエイリアンと呼称していた物体は、宇宙に生きる生命体でした。
我々研究部門内でティヤンキと呼ぶこの生物は極めて御しやすい性質を持っています。
亜空間の低い次元を通過し、極めて簡単に星系を渡り歩きながら、巨大ガス惑星上層部によく見られる気体を主食としているようです。
それが唯一の食料であるとは考えにくいですが、ほかに栄養分を摂取している様子は観察されていません。
また、攻撃性は極めて低く、興奮状態のときでさえ攻撃してくることは稀です。まあ攻撃してくるとすればですが。
この生物の調査により、周波数同期に関する研究に進捗がありました。
「報告書を読む限りでは、ティヤンキはこちらに対して脅威になるような行動はとっていないようですね。」
「はい、確かにそうですが。まだまだ接触して間もないですし、念のための警戒は怠らないほうが良いかと。」
「心配性ですねヴェアーは。私たちが初めて出会った銀河の隣人達ですよ。有効に対処して行きましょう」
どうやらマスターは、この宙泳生物達に何かしら有益な活用法がないか、期待しているようだ。
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メモ
どうもこの小説を書いておりますUzinです。
この小説で書いております科学技術などの考証はガバガバです。
ある程度調べてから、私の妄想によって創造したものとなっております。
所謂、「この物語はフィクションです。」ってやつです。
ある見方のステラリス銀河史 Uzin @Uzin
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