第2話 忌報

 恒星間調査艦試験航海艦隊は、試験課程の中でイレギュラーな調査を行ったが、

それによる、スケジュールの遅延はそれほど問題とはなっていない。

 現在もアドニア星系内の惑星間を調査を行いながら、試験航海中である。


グレゴ暦2201年3月28日


「マスターお疲れ様です。」

「ありがとう、式典は肩が凝っていけないわ」



この日レガリアン人初となる、アドノア星以外への静止衛星軌道にステーションを建造するため、イェーガー級建設船メルダースが宇宙港から出航した。

ふと思う、この星の人たちは、ただ単にお祭りをしたいだけなんじゃなかろうかと。



グレゴ暦2201年5月17日


建設船メルダースは何事も無く航海を終え目標地点に到達。

アドニア星系第9惑星セレンディピティ第一衛星ヌエバカディスにおいて、採掘支援ステーションの建造を開始した。



グレゴ暦2201年8月23日


ヌエバカディス採掘支援ステーションのコアユニット完成。最低限の機能はこれで完成した。

これにより、エネルギーとして利用可能なガス資源を獲得した。

これ以降、採掘ステーション等の建設が次々と行われる事になる。



グレゴ暦2201年12月5日


「マスター、恒星間調査船試験航海艦隊提督クラリース・バーゲロンより打電。」


ワレ シケンコウカイシュウリョウセリ コレヨリキカンスル


「2年弱・・・。途中大きな問題なくよく完遂してくれました。

ヴェアー、私の名で祝電を送っておいて下さい。」



恒星間調査船試験航海艦隊はおよそ2年に及ぶ試験航海を終え、アドノアへの帰路に就く。

今回の試験航海では、通常航行・FTL航行・調査機器の試験と、長期航海において起こりうると予想される事態に対しての訓練も行われていた。

調査機器の惑星探査試験では、新たな資源を見つけることも出来た。

先のヌエバカディス採掘ステーションは、この発見された資源を採掘する為のものである。



 ほんの数世代前には天文学者が夢想するしかなったデータを入手した。

 現在研究部門では、この取得したデータの精査が行われている。




グレゴ暦2202年3月1日

2年3ヶ月に及ぶ試験航海を終えた恒星間調査船試験航海艦隊は、無事アドノア宇宙港へ入港した。


「多少の遅延はあったものの、無事全てのスケジュールを消化出来ました。」

「はい、現在試験航海に参加していた各艦は、フルメンテナンスを実施中です。」

「それが終われば、いよいよ本格的な恒星間調査が始まるのですね。」



グレゴ暦2202年4月3日


試験航海に参加していた艦船のメンテナンスを終え、新たに編成された恒星間調査隊が宇宙港を出発した。

マスターはいつものように式典に出席している。


恒星間調査隊 ガガーリン級調査船サッチ 艦橋

 調査隊の全権を委任された、クラリースは護衛艦バラオとリンクされた音声通信システムへと、言葉を投げかける。

「これより、我ら恒星間調査隊はこのステラリス銀河調査へと出発する。

最初の調査対象はジプティス星系だ。

 諸君、長い旅路となる・・・、覚悟しておけ。」




 レガリアン人は、この広大なステラリス銀河への本格進出の第一歩を踏み出した。

 

 この数日後ドロレズ・ゴンザレズの下に、報告書が研究部門から提出された。

 この報告書は、調査艦隊が得たデータを用い、惑星環境シミュレータを改善したことにより浮き彫りになった問題点についてだった。



グレゴ暦2202年4月17日


アドノアの生物圏はここ数世紀急速な変化を経験してきましたが、著名な科学者たちが、レガリアン人が絶滅に直面するかもしれないと警鐘を鳴らしています。

自然によるこのような定期的な生命浄化は、広大な宇宙に存在する惑星にとっては避けられないものです。


これに対し我々は、大規模な天文学的事象や惑星固有の大災害のせいで、生存に適さなくなったいくつかの惑星を調査する計画を提案します。

こうした破壊的事象がどのように起こったのかを研究することにより、アドノアとレガリアン人が同じような運命を辿ることを避けられるかもしれません。



 この日より、希望を持って臨んでいた宇宙開拓は、自身の生存を賭けたものへと変わる。


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メモ

 レガリアン人の保有する、宇宙ステーション及び宇宙船はセクション方式を採用している。

整備と装備換装の簡略化を図れるだけでなく、拡張性の確保も同時に行える。

 また、各セクションはさらに細かくモジュール単位で区分されており、これも整備等の簡略化に一役かっている。

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