食卓
そして僕ら三人は、さっきまで母が火にかけていたカレイの煮つけをつついた。見た目こそ母の趣味を疑うものだったし、騙されているんじゃないかと心配だったけど、久田さんは聞けば聞くほど問題の見当たらない、屈託の無い人で、この人が家族になるのは僕も賛成だった。
「
確かにこれだけ極端な体格と、このキャラクターだと、なかなか男性として見てくれる女性はいなかったのかもしれない。あまりにも屈託が無さすぎて、そんなばかな話は無いだろうと思いつつも、内心僕も、弟ができたような感覚があった。
でも、よく考えたら僕には年上の甥っ子がいるのだ。家族にはときどきそういう、強烈な違和感を覚えるようなことが起きる。偉そうでしつこくて年上の甥っ子がいて、弟みたいな屈託の無い、かわいい父親がいる。
僕はそんな、冗談みたいな家族環境の中にいるのだと、食事が進んでいく中で気付き、飲み込み始めていく。
やっと整理がついてきたというのに、お母さんが食事の終わる頃、妊娠発表を電撃的に僕と久田さんに繰り出してきて、また僕の心の中は大嵐になる。だけどこの衝撃もゆっくり、いま口の中いっぱいに入れてしまったこの白米みたいに、たとえ喉詰まりしそうになって苦しくても、ちょっとずつ噛んで飲み込んでいけば、きっと受け入れることができる。この年齢で出産を乗り越えなければならないお母さんの横で、いつまでも僕も、ぶうたれているわけにはいかないし。
だって、自分の今の状況と僕を産む時のことが重なって、僕に当たり散らしながらも涙ぐんでいたお母さんも、僕がジューシュクフだとどこかで気付いても、変わらず接してきてくれた陽翔兄ちゃんも、僕の横で子どもができたことに僕の目も厭わず喜びまくって、テーブルに膝をぶつけて痛がっている久田さんも、みんなぜったいに悪い人じゃないからだ。
家族、ところにより衝撃 クダラレイタロウ @kudarareitarou
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