ツーたんことツタンカーメン王が、幽霊となってミイラ職人カルブの前に現れる。そう、まさにツーたんのミイラ化が施こされているときに。
ツーたんは割と呑気でマイペース。時の神トートの力で知った未来のパンケーキを食べたがったり、カルブの邪魔をしてみたり。
でも、彼の事故死には不審な点が……そして彼の最愛の妻アンケセナーメンに魔の手が忍び寄る――!
古代エジプトの史実を下敷きにえがかれた本作は、豊富な知識に裏打ちされた本格派ながら、親しみやすいキャラクターと文体で軽やかな作品となっています。
読書中はまるでその時代のエジプトにいるように感じさせてくれる作品です。
また「ツタンカーメンを暗殺したのは誰なのか」という歴史ミステリーに向き合う面白さも。
エジプトや古代好きならきっとこの作品が好きになるはずです。
まず、古代エジプトに関する作者様の様々な知識が凄いです。
そしてそこから紡がれる、主人公カルブとつーたんの不思議な日々が主軸の物語となっています。
二人のかけあいは見るだけで面白く、かなり重い設定を扱っているにもかかわらず、つーたんのキャラクター性によって終始楽しく読み進めていくことが出来ます。
それでいて後半の盛り上がりや緊張感も十分で、過不足無く完結する中編として、とても完成度の高い作品となっています。
ぜひ皆様も、この作品を通して遠いナイルのほとりに想いを馳せてみて下さい。きっと手に取るように彼らの歩んだ時代の光景が浮かび上がってくることでしょう。