おまけ.皆の想い


由梨香と新しい関係を築いた翌日。

俺達はかなり暗い表情で登校した。



彼女と別れ、俺は自分のクラスへ。

先に登校していた鈴木と田中と一瞬目が合ったが、挨拶をする前にあちらに反らされてしまった。

昨日の事があるから仕方ないかと思い、自分の席に着き時が来るのを待つ。



今、隣のクラスでは由梨香が佐藤さんに、俺と由梨香が付き合う事になった事を報告しているはず。


言えば彼女達の関係がこじれるだろうことは俺でも分かったが、由梨香は友人に隠し事をしたくないと言って聞かなかった。

俺もそれ以上はとめず、結果だけどうなったかを後で教えてもらう事になっている。今はその連絡待ち。


席について5分。

そろそろ朝のHRが始まるといった頃に、人が横に立つ気配がした。



「花田君」

「あ……佐藤さん」



由梨香かと思って振り向けば、そこには昨日走り去った佐藤さんがいた。

思わず動揺してしまう。


「ゆりちゃんから、聞いたよ。付き合う事になったって、本当?」

「あぁ、本当だ」


彼女は、俺の目を真っ直ぐ見ながら問いかけてきた。

その目線に、俺も彼女と真っ直ぐ向き合わなければと思い、正直に答えた。


「すまない。佐藤さんの気持ちに答えられ「おめでとう!鈴木君、田中君、上手く行ったみたい!」




話をさえぎり、佐藤さんは俺の両手をとってなにやら祝福を。

そして、こちらには目を向けていない鈴木と田中の2人を呼ぶ。




「え、マジかよ」

「おいおい、こんなに上手くいくもんか?」


しかし、彼らは不機嫌どころかどこかニヤけた表情でこちらに歩み寄ってくる。


「さとっぺ、1分立ったから来たけど?」

「あ、ゆりちゃん。説明するからこっち来て」


関係が悪くなるどころか、親しげに話しかける佐藤さん。

俺と由梨香が3人のリアクションに困惑していると、佐藤さんが丁寧に説明してくれた。






簡単にまとめると、佐藤さんと鈴木、田中の3人で、俺と由梨香を付き合わせる作戦を立てていたらしい。

俺が鈴木や田中に由梨香とのことを相談していたように、由梨香も佐藤さんに同じような話をしていたようだ。


そこで結託した3人は、俺と由梨香を話し合わせる為に一芝居うったのだという。

佐藤さんの告白も、田中が怒って帰ったのも、今日の不機嫌そうなのも全部演技だったとか。






「そ、そんな……さとっぺに絶交されると思って昨日寝れなかったのに」

「ご、ごめんね?びっくりだよね」


朝から目に出来たクマを気にしていた由梨香程じゃないが、俺も緊張はしていた。

その結末がこれか?



「ここまでやる事無いんじゃないか?」

「これは恋を実らせるのに必要だったんだよ」

「違和感に気付けないようじゃ、まだまだだな」



そういうものなのか?

やっぱり、俺にはまだよく分からないな。


「まぁ、そのおかげで俺が由梨香を好きな事に気付いてもらえたからいいが」

「ちょ、それここで言う?ほ、ほら、皆ニヤケてるじゃん!」



俺の発言に、顔を赤くする由梨香とニヤニヤと笑う3人。

俺は間違った事を言ったかと首をかしげる。


相変わらず知識の足りない俺だが、由梨香といれば何れ成長出来るだろう。



「由梨香、好きだぞ」

「だ、だから……もう!バカ!」


恥ずかしがった由梨香に背中を叩かれながら、彼女の為にも新しく知った感情を大切にしようと改めて思えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋愛マイナス1年生 とし @ecl-toshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ